第2話 

誰かが言った「飯がまずい」と


誰かが言った「食べる飯がない」と


誰かが言った「天然物の食糧が食べたい」と


宇宙へ進出した人類社会は恒星間航行技術の発展によって、光年単位ですらそれなりに気軽に行き来出来る程度に世界が狭くなっていた。


数十数百の惑星に入植し、開発し、資源を集め、それを糧にして更にその先の惑星へ。


人類社会の経済そのものとも言える星間企業達は、他の企業に負けないと言わんばかりに、惑星開発にあらゆるリソースを集中していた。



いや、集中しすぎていた。



リソースの集中、それにより惑星開発とは関係ない分野や文化は尽く切り捨てらていき他のものに代替されていく。


代替された物の中で最も代表的な一つは、芸術。


それらはもはや人の手で作られる事は無くなっていき、AIの出力によって代替され始めている。


速く、


安価で、


お手軽な


働き手となったAIの発展によって、人間の芸術家は急速に駆逐され今に至っては極少数である。

 

 

そしてもう一つが、有史以前様々な国で親しまれ育まれきたとされる食文化だろう。


これまでに数十数百の惑星に入植し人口爆発を続ける人類の食糧需要に対して、食糧供給は全くと言って良い程に追いついておらず。


そう、人口が増えるごとに飢餓の蔓延が加速していったのだ。


しかし企業としては惑星開発を遅れを取るような事をしたくない。そう考えていた星間企業達はこう考えた。


「わざわざ天然物の食料を生産する必要はない」


「最低限の味と大量生産可能な化学的に生成できる食料を開発すればいいと」


そうして「天然食糧」の代替として開発されたのが現代の錬金術とも呼ばれる、「合成食糧」が発明された。


その名の通り、非生物素材をも含めた代替可能素材を使って化学的に合成して食糧を生み出す。


これによって大幅に不足していた膨大な食糧需要を満たす事に成功し。


増え続ける需要に確実に応える供給を手に入れた星間企業は、改めて惑星開発へと全力を注ぎ始めた。


「これで、なんの心配もなく開発できる…」と



だが当然の事ながら、天然食料にも欠点があるように合成食糧には合成食糧なりの欠点があった。


見た目は天然食糧そのもので食感も天然食糧にそれなりに近いしかし何よりも


「不味い」。


美味なんて感じる余地すら無い程に不味い。


『別名食べられるゴミ』


取り敢えず見た目と食感をそれなりに再現して、何よりも大量生産出来れば良いという考えの元に開発されたというのもあるが、何よりも当時の技術の限界もあった。


条件さえ合えば無機物すら素材とする合成食糧で、「取り敢えず人が食べれるくらいの味」に仕上げられただけでも奇跡とさえ言えただろう。


何せ紐付きの星間企業達は

「食べられる事さえ出来れば良い」

と言って、無機物な素材が多くを占めていたのだ。(これで美味くなるわけないだろ!)ととある市民は言ったそうな。


とはいえそんな絶望のような酷い食糧を作っても、人並みな生活を送るには十二分な給料が出ていたし、後に世代交代によって不味い飯に元から慣れていた者達にとっては、品質向上を行うという発想すら無かった。(悲しいね)


そうして不足分を補うように大量生産され始めた合成食糧だが、これが食文化の死滅の始まりだった。


食糧不足で飢えていた人々にとって、不味くても腹を満たせる食べ物があれば当然それに飛び付くだろう。


ましてや餓死が目の前にあれば、味などどうでも良いのは至極当然。


辺境どころか中心部太陽系の一般層の人々すら食料の調達に苦労し始めていた状況では、食事とは「生きる為」の手段と成り下がっていた。


素材を集め、


合成し、


輸送し、


食べる。


食材とはそう作られる物であるという事が当たり前となり、食事とは生きる為に食べているに過ぎない。


それが「一般的な常識」であるとされてから、数十年が経過しもはや食文化は完全に消え去ったかと思われた…


が、とある惑星が売りに出され、とある幼女によって食料を生産されるようになったその日から、人類の食文化は急速に発展していくことになる…




 

 

 しかしそれはまだ先のお話…

 
























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