彼女を理解する

「それでねーお母さんがね?って聞いてる?」そう言われ僕は彼女の方へ向く

「ご、ごめん考え事してて....」

「考え事って?」

 そう聞かれ僕はどう返せばいいか言葉に詰まる

 彼女に告白を受けてもらえたことが嬉しいのはもちろん予想とは違う性格だったこともありかなり困惑している

 そんな考えを読まれたのか彼女は

「もしかして性格違うって思ってる?」と言われ僕が少し俯くと

 言いづらそうに彼女は「あっ...図星だった?」と言ってくる

 少し気まずくなり僕は「うん....」とぎこちなく返す


 彼女はもしかしたら思っていたよりずっと....僕はその続きを無意識に言葉にしてしまう

「思ってたよりすごくなんていうか、子供っぽいな....」

 僕は慌てて「あっ、いやっこれは....」どうにか弁明しようとするがうまい言葉が見つからない

 彼女はぎこちない笑みを浮かべ「別にいいよ?性格作ってるだけだし....ね?」と言われ僕は「あはは...」と苦笑いを返す


「それじゃあ私、ここだから。じゃあね」と言われ僕たちはマンションの前で別れる

「うん、じゃあね」と僕も返して家へと足を進める

 すでに空は紅から黒へと染まりかけていて少し肌寒い

 人がいない道を考え事をしながら歩く

 もしも星風と付き合えたら....

 そのもしもが叶ったのだこんなにうれしいことはない....はずなのにどこか夢を見ているような感覚がして現状を受け止められずにいた


 数分歩いただろうか自宅へとついた僕はポケットから鍵を取り出して中に入る

 家は電気がついておらず自分以外の人の気配はしない

 それもそうだろう親は母親は事故で死に父親はそれから狂ったように仕事にのめり込み今では海外に行っていて帰ってくるのは一年に一度あるかないかだ


 僕は上着を脱いでソファにもたれ掛かる

 ボーっとして頭を落ち着けていると段々と現実が理解できるようになってきて....

「~~~~~~ッ!」

 ソファに置いてあったクッションを口に押し付けて大声を出す

 今、ようやく認識できた

 星風椎名と付き合うことに成功したという現実を

 あたってくだけろどころか最初からくだけているような状態だったのに何かの間違いか付き合うことができたのだ

「明日にでも死にそうだな....」とそんなことを呟き僕はただソファに意識を預けるのだった


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届かぬ星に夢を見る ルイ @ruisyousetu

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