第39話
続く四校時を、何とか乗り切った。
でも、あたしはもう、限界だった。
さっきの、誰かと誰かがしていたトイレでの話がずっと頭の中にあった。それがあたしを搔き乱し続けていた。
混乱を隠しきれていないらしい。
周りの人たちから、心配の気配を感じる。
朝の感じとは、明らかに違う。
あたしは、心配をかけている。
あたしは、みんなの邪魔をしちゃってる。
「給食、食べられそう?」
ミキに問われて、あたしは黙る。
「保健室、行く?」
あたしには、どうしたらいいのか、わからない。
でも、このままここに居続けたら、みんなの迷惑になるってことくらいは、あたしにもわかる。
あたしは、保健室のベッドにゴロンって寝転んで、お母さんが迎えに来てくれるのを待った。
――あたしのことを殺し屋さんって言ってる人が、あたしと同じ苦しみを味わえばいいのにな。
そう、心の中で思う。
でも、何も起こらない。
当たり前かもしれない。
あたしは、呪いをかけるかのような強い思いを込めて、念じたわけじゃないから。
お母さんはなかなか来ない。
先生が連絡したとき、どこに居たんだろう。
家に居たんだったら、もうそろそろ来てもいいのにな。
買い物の途中とかだったら、もう少しかかるのかな。
待ってる時間って、なんでこんなに長く感じるんだろう。
いつもより、一秒が長いんじゃないかって思う。
そんな、伸びた時間の中であたしは、不安でいっぱいになった。
もし、お母さんに何かあったら、どうしよう。
あたしが今日一日、頑張ればよかっただけなのに。
お母さんに何かあったら、どうしよう。
ガラガラガラ――!
保健室の扉が開く音がした。
ベッドの周りにはカーテンが引いてあるから、誰が入ってきたのか見えない。
でも、あたしにはわかる。
「失礼します!」って声で、誰だかわかる。
お母さんだ。
「開けるよー」
「……うん」
シャッとカーテンが開く。あたしの目に、ホッとした顔のお母さんが映る。
「よかった。思ったより元気そうじゃん」
「なにそれ」
「えへへ。心配しすぎちゃったのかも」
あたしだって、お母さんのことを心配してた。
あたしたちはお互いに、心配でいっぱいになって、お互いの顔を見て、安心したみたい。
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