13.お守り

第31話


「だいじょうぶ?」

 後ろから、声がした。

 振り返ってみたら、そこには同い年くらいの女の子が立っていた。隣には、大人の女の人。たぶん、この子のお母さんだ。

「これ、あげる」

 差し出された、何かを見る。それは、おもちゃコーナーで売ってるビーズで作ったのだろう、キーホルダーだった。

「……え?」

「わたしね、ビーズでこういうのつくるの、好きなの」

「ああ、うん」

「お守り。楽しくて作りすぎちゃったやつ、カバンに入れてたんだ。お願いしながら作ったわけじゃないけど、でも今、ちゃんと帰れますようにってお願い、込めておいたから。よかったら、もらって。ああ、いや、わたしはべつに、そういう超能力みたいの、ないんだけど」

「あ、ありがとう」

 あたしは、キーホルダーをギュッて抱きしめた。

 この子は、超能力みたいなのはないって言う。

 でも、あたしは、あると思う。

 落ち着け屋さんっていうか、なんていうか。

 そういう、優しい力があると思う。


「何か飲む? 買ってあげる。好きなの選んで」

 女の子のお母さんが、しゃがんで、あたしの目を見て言った。

 あたしは首をブンブン振った。

 あたしはキーホルダーで心が満ちていた。もう、充分に優しさをもらっている。これ以上もらったら、もらいすぎだと思ったんだ。

「チル、何か選んであげて」

「ん? そうだなぁ。うーん……。メロンソーダとか、どうかなぁ。好き? メロンソーダ」

 問いかけられて、あたしは悩んだ。

「好き、なのかなぁ。嫌いじゃ、ないけど」

「じゃあ、メロンソーダ!」

「まったく。自分が好きなものを選んで」

「いいじゃん、この子……あれ? 名前、なんていうの?」

「ジュ……ジュア」

「ジュアか。いい名前だね! ジュアが嫌いじゃないって言ってるんだもん。わたしが好きなやつでもいーでしょ?」

 チルと呼ばれた女の子が、ニカッと笑った。



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