6.呪う相手の特徴は
第13話
『何があったのか知らないけど、言葉がきついよ。ジュア』
背中のほうから声がして、あたしはくるっと振り返る。
「ああ、タクトくんか」
一年生の時に同じクラスになったっきり、別々のクラスだった。でも、六年生になってまた一緒のクラスになった子だ。頭が良くて、優しい。良い人だけど、良い人だから近づきにくくて、あんまり仲良くなれてない。だからあたしは未だに、名前を呼ぶとき、〝くん〟をつけてる。
「なんだよ。期待外れみたいな言い方だな」
「なんか、ごめん」
「〝なんか〟は余計だけど、うん。許す」
タクトくんは、どうせ暇だしって、あたしの話を聞いてくれた。
一年生が青信号になって横断歩道を渡ろうとしたら、信号無視の車が走ってきたっていう話を、あたしはした。
「どんな車だったの?」
「え?」
「ほら、車の色は何色だったとか、ナンバープレートが何色だったとか、どんな形をしていたとか。そういう情報がないとさ、どうにもならないっていうか」
「ああ」
「もし、ジュアが嫌じゃないなら、お父さんとかお母さんに頼んで、報告してもらうといいよ」
「報告?」
「ほら、不審者情報ってあるでしょ? 細かい車の特徴とかがわかるなら、そういう情報を伝えたら、もしかしたら危険車輛としてみんなに周知してくれるかもしれない。まぁ、よく似た別の車とかさ、同じ車でも違う運転手さんが運転している可能性はあるから、今回のことは難しいのかもしれないけど」
あたしはため息をついた。ちょっとだけ、報告したらいいことが起きるのかもって期待した。でもそれが、〝難しいのかも〟って言葉を聞いて、一瞬ではじけた気がしたから。
「でもさ、報告するって、大事だよ。学校に通っている人って、たくさんいるでしょう? その中にさ、お父さんやお母さんが警察官の人が居たりしたら、どうなると思う?」
「うーん。わかんない。わかんないけど……もしかしたらちょっとくらいパトロールしてくれるのかも? とは、思う」
「ね。行動したら、何か変化が起きるかもしれないんだ。ここでグッと飲み込んだら、それまでだけどさ。ダメかもしれないけれど、もしかしたら、もしかするかもしれない。だから、話すことには価値があると思うよ」
タクトくんと別れて、あたしは一人トボトボと歩きながら、お父さんやお母さんに報告してくれないか相談するために、車の特徴を思い出そうとした。
運転席にいた人がどんな人かは、見てなかったからわからない。
でも、車は見た。
ちょっと、特徴がある車だった。
全体的には紺色っていうか、そんな感じの色だった。黒じゃない。でも、紫を黒に近づけたみたいな色。ラメみたいなキラキラは――入っていたっけ? その車の後ろのところには、縦に二本の線があった。それは白くて太い線で、そこはキラッとしてなかった。線じゃないところはなんだかキラッとしていた気がする。ってことは? キラキラした紺みたいな色ってことか。
ナンバープレートは……。番号はわからない。でも、黄色かった!
思い出した、思い出した! ああ、思い出したらなんだか、イライラしてきた!
「ああ、もう! キラキラした紺みたいな色で白い二本線がある黄色いナンバープレートの車なんてさ、一人で勝手に事故ればいいのに!」
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