3.悪口
第6話
あたしはときどき人のことを呪いながら、六年生になった。
六年生になったら、先生がこれまで以上に遅刻にうるさくなった。
まぁ、いつもちゃんと間に合ってるから、そんなガミガミ、あんまり気にしてないんだけど……。
って、大変だ!
今日は朝ご飯を食べる時、のんびり優雅にしすぎちゃった。そのせいで、急いで家を出ることになった。いつもだったら、お母さんにかわいいヘアアレンジをしてもらうか、教えてもらいながら自分でするんだけど、そんな時間はなかった。
あたしは長い髪を揺らして、時々長い髪に視界を邪魔されながら、ランドセルのふたをパカパカさせながら、学校まで走った。
ふう。なんとか間に合った。遅刻じゃない。安心したからっていうのもあるけれど、廊下は歩くところだから、校舎に入ってからは走らない。タッタと歩きながら、六年三組の教室を目指す。
すれ違う人が居たら、「おはようございます」っていうし、クラスメイトとか知ってる子だったら、「おはよー」って言う。
仲良しの子がいたら、ちょっとおしゃべりしたくなるけれど、お互いに時間に余裕がないから、おしゃべりはおあずけ。
登校して、はじめて教室に入る時は、足元にある線のところで一旦停止。それで、頭を下げて、「おはようございます!」って言う。これは、担任の先生が決めたルール。中にいるのはクラスメイトだけれど、ここに立ってする挨拶は、きちんと、大人の人にするみたいにするっていうルール。
でも、「おはようございます!」って頭を下げたところで、「おはようございます」が返ってくるわけじゃない。返ってきても「ジュアちゃんおはよー」くらいだし、返してくれない人のほうが、正直を言うと多い。
なんて、文句みたいなことを言っているけれど、あたしだって返事をする側だったら、「おはよー」って言っちゃう。
この、なんだかちぐはぐした感じが、あたしはムズムズする。大人相手みたいに挨拶するなら、大人相手みたいに返事した方がいいんじゃないかって。毎朝、朝の会が始まるくらいまで考える。
あたしは遅刻ギリギリで来たから、急いで準備しないと、朝の会が始まっちゃう。教室の中だって、ちゃんと歩いて移動する。だけど、心は急いでる。ランドセルを机に置いて、引き出しにしまうものを出そうとしたら、ザザーって教科書が流れ落ちた。
あ、そっか。あたし、ランドセルの錠前、ちゃんと止めてなかったんだった。
「大丈夫?」って、コトちゃんが心配してくれた。
あたしは「やっちゃった。ヘーキヘーキ」って照れ笑いして、落としたものを拾って、いつもと比べたら早送りしてるみたいなスピードで、引き出しにしまっていく。
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