十五話 父様と行く! 帝都巡りの始まり!
◆◆◆◆
「父様! せっかくなので帝都を案内してください! どうせずっと前から脱走を繰り返して詳しいんでしょ?」
「ダメだ! 父親にそう言うなよ! まあ、詳しいけどな!」
ダメか……。だけど、せっかくバッタリ会うことができたんだ。絶対に俺よりも父様の方が帝都のこと詳しい。
それに、ラドルさんに聞いたんだ。昔から、視察って言って帝都で遊び回ってたってこと。
俺は、知ってるよ?
だから、意地でも教えてもらう。
それに、父様は俺に……自分の子供にかなり甘い。その分母様たちがものすごく厳しいんだけど、姉も兄も弟も妹も、みんな疲れた時は父様のところに行く。
母様から逃げてきただけなんだけど、父様はやっぱり甘くて、それについても『かわいいなぁ』で許してしまう。少しばかり甘すぎると思う。
だから、今回は、それを利用する。全力で!
「父様! 俺、父様が視察で何を体験したのかを知りたいです! 勉強させてください!」
どうしてもの時に、勉強させてくださいという。
そうすると、必ずこの現象が起きるはず。
「あ……いや、勉強……ね。う〜ん、まあ……勉強ならいいか」
これだ。
ふだんおねだりするだけじゃあダメ! と言われてしまうことも、勉強という皮をかぶることで、少しだけ考えが甘くなる。
だから、勉強という建前で、父様に帝都の案内をしてもらうのだ。
「じゃあ、よろしくお願いします!」
「ああ゛、もう! これはあくまで勉強だからな! 遊びに行くんじゃないんだからな!」
うん。言われなくてもわかってるよ。勉強(建前)だよね。
「まずはどこに行くの?」
「お前さ……、テンション高い時とかだけ敬語やめるのをやめろよ」
「俺は敬語を使っています」
「……まあ、いいよ。まずは、オススメの串焼き屋台だ!」
なんだかんだ、父様は俺に甘かった。
俺は、父様に案内されて、串焼き屋台がある場所に移動し始める。
◆◆◆◆
父様に案内されて、ついた場所は、冒険者ギルドに向かうときに通った大きな広場だった。
ここは、人が多かったのと、早く冒険者ギルドに行きたかったとで、あまり見ていない場所だった。案外近くにあるものなんだなって思った。
「この広場に目当ての串焼き屋台が?」
「ああ。ここは、元Bランク冒険者のおっちゃんが、自分で魔物を狩って安く売ってくれている屋台なんだ。しかも、料理人を目指してた時期があったらしくてな、味付けも完璧だ。この店はな、俺が子供の時からやってるんだ」
「へぇ〜」
父様、詳しいね。子供の時も問題児だったんだね。
っていうか、父様が子供の時がおっちゃんなら、父様がおっちゃんになってる今、おっちゃんはおじいちゃんになってるんじゃない?
串焼きのおっちゃん、ヨボヨボなんじゃない?
そう、思ってたんだけど……
「よう、リベリオの坊主。久しぶりだな!」
やってきた串焼き屋台では、左目に眼帯を、頭に布を巻いた、傷だらけの
わっか……。見た目、まだ、お兄さんって言ってもおかしくない見た目じゃん。すごい若い。父様の方が老けて年上に見える。
「よう、串焼き屋台のおっちゃん。久しぶりだな!」
「ははっ、俺は確かに串焼き屋台のおっちゃんだが、俺にはレンガルディって名前があるんだが?」
「子供の頃におっちゃんと呼べと言ったくせにな」
「ほんの少し前の話だ」
串焼き屋台のおっちゃんさんと、父様は、仲がすごく良かった。
お互い陽気で明るいから、やっぱり昔も気が合ったのかな?
「っておい! お前、娘がいたのか!? お前も大人になったんだな。早いな〜、成長ってのは」
串焼きのおっちゃんが、俺のことを見て、父様のことを見た後に、ものすごく驚いた。
「ほら。こいつが、俺の昔からの友人だ。生き方を教えてくれた先輩でもある」
父様がそう言ったせいで、俺は串焼きのおっちゃんを二度見する。もしかして……、父様の生き方を変えたのはこの人なのでは!? って思ったから。
「おい、黙ってないで名前ぐらい言えや」
父様にぼんと背中を押されて、串焼きのおっちゃんの前に出る。
おっちゃんは背が大きくて、背が低い俺だと見上げるような形になってしまう。
「えっと、ルカルージュです……。よろしく串焼きのおっちゃん。それと、俺は男」
「おい……ちゃんと名前で呼べよ」
父様がそう言いながらじーっと見てくるが、そんなことは関係ない。
「父様だって同じ呼び方してるじゃないですか」
そういうことだ。
「おいおい、この見た目で男かよ」
串焼きのおっちゃんがケラケラと笑ってくる。
悪かったね、この見た目で!
髪が長くて、女の子みたいで、エルフ由来の美形で、細身で! そしてチビで!
笑われながら、目の前でムスッと不貞腐れる。
「というかリベリオ。お前の嫁さん、エルフじゃないんだろ? なんで子供が、……エルフなんだよ」
「あ〜、それは俺もよくわからん。見てもらったが、どうやら先祖返りらしい。うちの家系に昔、エルフが嫁いできたことがあったんだとよ」
「なるほどな〜……。それで、エルフの特徴を色濃くついでいるのか。あれ、だが……ん?」
串焼きのおっちゃんが、俺のことをジロジロと見つめてくる。なのに、その目は俺のことを見ている気がしない。俺と同じところに存在している別のものを見ている気さえする。
いきなり、串焼きのおっちゃんがずずずいっと近づいてきた。俺はビクッとなって、上半身を後ろに反らせる。
おっちゃんと俺の目がぴったり合う。
そして、『こりゃあ、驚いた』と声を漏らした。
「なあ、リベリオ……。確かにこいつは先祖返りのエルフだが、一つ間違ってることがある。こいつは、二回先祖返りしてる。」
「は…………?」
父様が、情報を処理しきれなくなって固まっている。
そして、処理し終わった後、もう一度言った。
「は…………?」
この間、俺は話に全くついていけてなくて、串焼き屋台でおっちゃんと父様の周りをうろうろすることしかできなかった。
「だから、こいつ、先祖返りの先祖返りをしてる……」
「おおう、つまり……」
父様がものすごく混乱している。珍しいものが見られた。
串焼きのおっちゃんが、父様の言葉をつなげる。
「つまり、エルフの先祖返りと同じってことだ」
「なるほどな」
「わかってないだろう」
「ああ」
なんか、俺に関することで、大変なことがわかったようだ。
おまけ
現在思っていること
ルカルージュ:なんか大変!
皇帝:まじ……? (わかってない)
串焼きのおっちゃん:初めて見た……
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