第8話  勇者の出現

 五層だと思っていたダンジョンが、32層だと分かって、真っ青になるアベルであった。


「……でもここは、後一層で終わりだよね!?」


「多分……長い時間の間にダンジョンが変化していったんだよ、このダンジョンは、急に出現したダンジョンだし、古い魔法の力が、働いてるかもしれない」


 アベルは、余計に怖くなってぐずり出した。


「タケル~ 早く、五層に行って帰ろうよ~」


「五層には、魔王がいるかもしれないぜ」


「ま……魔王!?」


アベルは、叫んだ。


『そんな危険な匂いはしないわよ』


リドリスは、宝箱から出てタケルの肩にとまった。


『オイ!?』


『あっちの子の頭の上で、透けてる子が睨むのよ。こっちに来るなって!! 何なのあの子!?』


『精霊の王女だよ』


『精霊!? 変なの。何で透けてるの!?』


<精霊だからよ!!>


『だから、なんで!?』


<知らない!!>


 女同士で火花が散りそうだったので、アベルとタケルは別々に五層に行く階段を降りて行った。


 これで最後の階層だ。


 五層は、奥に行く道はない。直ぐに行き止まりだった。


 ほんのり円形に光る魔法陣みたいなものが見えた。


 空間が揺らめいて……


 アベルとタケルはビックリした!!


 いきなり、魔王がここに召喚されてきたのか!?



 アベルは鳴き声の衝撃波を放ち、タケルは、バスターソードを抜いて構えた。



刹那



「あれ……こんな所に出るのか……どうなってるんだろう……」


 タケルには聞き覚えのある声だった。

 アベルには…一緒に過ごした時間が短くて、すぐには認識できなかったかもしれない。


 アベルは、エア・ボールを無意識に魔法陣から現れた者に投げつけていた。


 勇者の姓を持つ者は、我が子に気が付いた。


「お前たち!? タケル、アベルもいるのか? すごいな、この衝撃波にエア・ボールは」


すると、タケルから信じられないような言葉が出て来た。


「パパ~~ 怖かったよ~~」

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