第7話  宝箱

 ダンジョンと言えば宝箱。そんなイメージが、いつの間にか冒険者の中には定着していた。


 古くは、魔族や魔物が大事なものを隠したとか、神代の物が隠されているとか、噂が噂を呼んで多少誇張された話しになっている。


 すべてのダンジョンに、宝箱が有るわけでもなく、見つけても魔物の棲みかであったりするので要注意だ。


 てな訳で、五層に降りる階段の手前で見つけてしまった古い宝箱。


「どーする!? タケル」


「中身を見ないと分かんないさ」


 弱気なアベルは、へっぴり腰でタケルの後ろをついていった。


「スキルとかだったら良いのに」


「そんなもの、魔族が隠すかよ」


 タケルの呟きに、アベルが反論した。


 タケルは宝箱が、ミミック(宝箱の魔物)ではないことを確認するために、バスターソードを抜いて、宝箱に近づいて行った。


 バスターソードでつついても、宝箱は静かだ。ミミックではないようだ。


「四層で見つけた宝箱だ。良いものが入ってるかもしれないな」


 タケルは、嬉しそうに言う。


「なにを期待してるんだよ。ミミックじゃいって分かっただけじゃん」


 アベルは、あまり興味無さげだった。


「良いから開けるぜ!!」


 タケルがギィッと木製の宝箱を開けると中には、透明の羽根の生えた小さな女の子が眠っていた。


「なんだ!? これ?」


「身体があるから、精霊ではないようだね。」


二人が宝箱の中を見て話していると、その小さな女の子がパチリと目を覚ましたのである。


『あ~!! よく寝たわ~!!』


 金髪碧眼の可愛らしい少女だが、小さな宝箱に入いる大きさで、透かしのある羽根を持っていた。不思議に青く光る服を着ていた。


『あら、人間ね。あたいの仲間は、何処かしら?』


羽根のある少女は、2人にレトア語で聞いてきた。


『お前は、何者だよ?』


アベルはタケルの流暢なレトア語にビックリした。


『あたいは、妖精のリドリス』


『妖精!? って何?』


アベルは、カタコトのレトア語で聞いてみた。


『ちょっと、今何年? 精霊族と魔族の戦いはどうなったの?』


『星歴二千七百五十四年だよ。銀の森に神殿ができて二千七百五十四年目』


 タケルが答えると、リドリスは顔色を変えていた。


『嘘~!! 銀の森? 何? それ? あたい達は、魔族と精霊族の争いを避けてひっそり住んでたのに、巻き込まれてたくさんの仲間が死んだわ! 生き残った仲間とここで平和になるのを待ってたのに~!!』


『少なくても、今は魔族と精霊族の争いは終わってるよ。魔族も人間に狩られる程度の強さだし。それより、他の仲間はどうしたんだろうね? ここには、一つしか宝箱はなかったよ』


 リドリスは、悲しそうに言う。


『あたいが一番深く来たの。浅い所で眠りについた仲間は、もっと早く目覚めたり、持ち去られたのかもしれない』


『このダンジョンは五層の浅いものだけど』


 タケルの言葉にリドリスは、驚いた。


『32層のはずだったわ』




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