第6話  魔王じゃねぇぞ

「ち……父上の事を知ってるのか?」


 タケルが叫ぶと、

 頬被りの銀髪男がもう一人の眼鏡をかけて、大きな本を持っている年下らしい男に言った。


「エリー、こいつらの事分かるか?」


「多分ですけど、先ほどの風の精霊のせいですね。時空を飛んでます。僕らが百五十年ほど過去に飛ばさたのですよ」


「そんなこと、出来る存在なんているのか!?」


「あまり、飛ぶことはないですが、この場合は、召喚に近いのでしょう」


 アルベルクは、興奮気味にタケルの方を見た。


「なら、ご先祖じゃん!そっかぁ~! 平和で何より!」


 アルベルクがタケルに近づこうとした時、事態を呑み込めてないタケルが言った。


「ぼくがエル・ロイル家の当主の子供だ! ぼくには、兄がいる! 一人っ子じゃない!!」


「おいおい、さっきはお前が兄だと言ってなかったか?」


タケルは、しまったと口を押さえた。


「まぁ、良いや。俺たちには関係ないしな。それよりお前らどうやって、ここの鉱脈を見つけたんだよ。」


「鉱脈!? ……って何?」


「だから、精霊石の……」


「知らないよぉ!!」


 その時に、後方から二人をめがけて空気砲が飛んできた。


 エリアードとアルベルクよりも俊敏性に欠けるようだ。気がついたアベルは、無作為に空気砲、別名エア・ボールを投げていた。


 ただ、話していただけだったが、アベルの目には、二対一で弟のタケルが襲われているように見えたのだ。


「痛いよ!! アベル!! 痛いってば~!!」


 タケルの声で我に代えるアベルである。


 アルベルクが、アベルのところまで行って話をした。


「俺らが魔王に見えるのか?」


「だ……だって……急に出てきたって……風の王女が……」


「風の王女?高位の精霊なんですね」


 エリアードが、アベルに話す。


「実は、なにかの弾みで風の王女に、捕まってこの世界に来た、あなた達から見たら、未来人です。元の世界に戻るには、風の王女の力が必要です」


「ちょっと、待って」


アベルは、後ろを向いて上を向いて言った。


「アン……何をして来たの?」


<行き止まりまで行って、これ以上ここには何も無いって思って風を吹かせただけよ>


「時空を飛ばすほどの風を?」


<そんなに強くじゃないわ!!洞穴の中だもん。岩に向かって、どれくらい私の力があるかな~って思って……>


「アン!!婆様とも約束したよね?自分の欲で力を使ったら駄目だって!!」


<だって……>


「他の人に迷惑かけるからって婆様は、口うるさく言ってたんだよ!で、迷惑を被っている人がいるんだよ」


 アベルの頭上の風の精霊は、悲しげな表情をして<ごめんなさい>と謝った。


 

 そして、未来から来た人という二人を送るべく四層の行き止まり部分まで行って、アベルは風の王女に強い風を吹かせたのだった。


 消えた二人……


 タケルは無口だった。


「タケル……あの人達ボクらの、子孫なんだって。どんな世の中になってるのかな?聞いとけば良かったな」


 タケルは、答えない。

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