第5話 何時代の人?
「お~い!! 透明の可愛い子ちゃん!! 待ってくれ~!!」
<ほら、あの人たち!!>
風の王女のアンローラは、アベルの顔に巻き付いてこちらに向かってやって来る二人の男のことを言った。
「ま……魔王って二人もいたの……?に……人間に見えるけど……」
「父上の倒した魔王は、元人間だったそうだぜ」
パタン。アベルの倒れた音だ。アベルは、完全に思考も身体も機能が停止していた。
「アベル!! 仕方ないなぁ~」
タケルが、チビって、目を回しているアベルに代わって、魔王(?)と対峙することになった。
タケルは、背中のバスターソードを抜くと、身構えた。
砂サソリくらいのクエストなら、何度か受けている。
12歳にしてDランクの冒険者だ。
この階層は、光る苔でほんのりと周りが見渡せた。
大人の人間が、こちらに向かってやって来る。
精霊のアンローラが視えたという事か!?
タケルは、ゴクリと唾を飲み込んで、誰なのかを確認することにした。
母が、魔王の現れるような危険なダンジョンに、ぼく等を行かせるはずがない。
タケルは、母を信じていた。
「エリー!! こっちに行ったよな~」
「アル。だからここには、精霊石なんてありませんて」
「お前視えなかったんか!? 透き通った可愛い子! 俺のもろに好み~」
「その前に、ここは何処でしょう?」
「そう言えば……」
二人の銀髪の男が、タケルの前に来た。
「あれ!? お前、誰だ~!?」
アルと呼ばれた男は、タケルに話しかけてきた。
「ぼ……ぼくは、アベル・エル・ロイル。銀の森の次期当主だ!!」
すると、頬被りの男が話しかけてきた。
レトア語でもない。魔族ではないようだ。
ちなみに、二人は縁者なのか、どことなく似ていた。
何よりも二人とも、タケルや、アベルと同じ銀髪で、銀色の瞳なのだ。
「えっ!? オレもアルベルク・エル・ロイルだぜ。エル・ロイル家の一人息子だ」
頬被りの男が叫んだ。
「エル・ロイル家の兄弟は、二人だよ!もう一人は、あそこでのびてるタケル・ラミネスだ」
タケルが言うと、
「ラミレス姓は、百五十年前に魔王を倒した勇者に与えられた姓ですよ!」
銀髪の眼鏡をかけた短髪の少年の方が言った。
「お前ら、何者だ?」
「あなたこそ」
タケルと二人の男は顔を見合わせた。
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