第19話 放課後の影

Uさんが中学生のときの話だというから、もう三十年も前のことになる。

その日、彼は給食を食べたあと、クラスメイトと一緒に教室の掃除をしていた。

黒板消しを持ってベランダに出ると、朝顔の支柱に使う棒で黒板消しを叩く。

すると当然チョークの粉が宙に舞う。

そのとき、階下から咳込む声が聞こえた。驚いて下を見ると、担任がこちらを向いている。

あ、すみません、先生。

おう、気にするな。ベランダに出ていた俺も悪いよ。

と笑顔で許してくれた。

だが。

当の担任は今、教室でクラスメイトたちと机を一緒に運び、掃除に参加しているのだ。

それを確認したUさんがもう一度下を覗くと、担任が見たこともないような笑顔でひょいと顔を引っ込めた。

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