第14話 風船ガム

Nさんが小学生のときのことだと言うから、もう40年以上前の話だ。

その日は日曜日でN少年は駄菓子屋に遊びに来ていた。

風船ガムを買い、隣の公園のベンチに座りながらガムをプゥッと膨らませた。

パンッ!

もちろん破裂して口のまわりにベットリとガムが付くわけだ。

その瞬間、割れたガムの中からセミの成虫が一匹、飛び出て来たそうだ。

あまりのことに呆然としたN少年は口のガムを気にする余裕もなく、そのセミを見送った。

「当然、最初から口の中にセミなんかいなかったし、そもそもセミまで噛むガムって絶対にないよ」

以来、Nさんはセミが苦手なのだという。

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