第13話 紙飛行機

Mさんが通う中学校の隣には一軒のアパートがあった。

窓際に座る彼女が教室からそのアパートを眺めると、すぅーっと紙飛行機が二階の部屋の窓から飛んでいくのが見えた。

それはよくあることで、毎日ではないにせよ、彼女はその紙飛行機が校庭に着陸するのをぼんやりと見るのが好きだったそうだ。

ある日、クラスメイトの男子たちが昼休みに話し合っているのが、なんとはなしに聞こえてきた。

それは、あのアパートは空き家になっていて、誰も住んでいないというものであった。

「え? そうなの?」

思わず彼女は、男子たちに問いかけた。

「あぁ、そうだよ。昨日、放課後に俺たち肝試しにいってきたんだから、間違いない」

「そうそう。それにしても気持ち悪かったな。あの部屋」

男子たちが口々に昨日の感想を述べる。

「あの部屋?」

Mさんも会話に加わった。

「うん、開封してない折り紙が無数に散らばっていた和室があったんだよ。もうひどく汚れて朽ちていたけどね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る