第9話 古時計
Iさんの実家には所謂『古時計』がある。
名曲『大きな古時計』に出てくるアレだ。
歌とは違い、未だ現役だそうで、Iさんの両親や祖父母がネジを巻いて、今も時を刻んでいる。
壊れても修理にだし、かなり大事にされているのだが、困ったことがひとつあるそうだ。
それは、真夜中三時十五分に十二回、鐘を鳴らすことだ。
当然、眠りの浅い者は起きてしまう。
今は慣れたもので、誰も起きることはないのだが、訪問客を泊めた場合は、その者にかなり驚かれるだという。
長年、その時間が何を示しているのかわからなかった。
ある年、真夜中に祖父が二階の屋根から飛び降りて亡くなった。それがその時間だったそうだ。
不思議だったのは、祖父は半身不随で誰かの手をかりなければ移動できなかったことで、一階にある祖父の和室からどうやって屋根に上ったのか、今もって謎なのだということだ。
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