第8話 洗濯ばさみ

Hさんは病院の屋上でリネンを干していた。

後ろから誰かの気配がして振り返ると、シーツに人の影が映っていた。誰かきたのだ。

「お疲れ様です」

声をかけると、女性の声で同じような返答があった。

「取り込みにきたのよ」

シーツの向こう側から手がスッと伸びてきて、シーツの両端の洗濯ばさみをひとつ取る。

そして、もうひとつの洗濯ばさみを取った瞬間、シーツがバサリと床に落ちた。

そこには誰もいなかったそうだ。

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