第3話 とある剣士の後遺症〜罪悪感を背負って〜③

 取材陣は、デニスさんとジェイクさんの関係性を考慮し無理にはインタビューを受けなくても大丈夫という事を伝えたが、ジェイクさんは暫く考えたのちインタビューを了承してくれた。


 ────中々、答えずらい事もお聞きすると思いますがインタビューを了承して頂きありがとうございます。


「……はい、まぁそうですね……自分自身、気持ちを吐露したい部分がありますので」


 ────の前と後で何か関係性に変化みたいな事はあったんですか?


「……デニスさん自体は何も変わらずに周りの仲間と同じように接してくれますよね」


 ───元々はお二人はどの様な間柄だったんですか?


「う〜ん、本当に普通の先輩後輩って感じですよね、でも自分も剣士という事もあって良く稽古とか仕事のアドバイスみたいな事も頂いていたので、まぁ関係性は近いですよね」


 ────答えづらかったら無理にお答えしなくても結構なのですが、デニスさんがジェイクさんを庇って今の状況に至ってしまったんですが、その時のお気持ちを出来ればお聞きしたいのですが。


「…………う〜ん…………」


 ────やっぱり答えるのは難しいですよね。


「……いえ、最終的にインタビューを了承したのは自分なので……正直、あの場面が頭から離れなかった日は無いですね」


 ジェイクさんはその後、自責の念に苛まれ次第に心が病んでしまい、一時は引退も考えました。

 しかし、引退を止めてくれたのはリハビリから仕事に復帰したデニスさん本人でした。


「……ギルドの仕事をしていても、やっぱり自分自身で身が入らないと言うか、こう落ちてたんですね、それでもうマスターから今のお前の精神状態だったら危険という事で一旦仕事から離れてたんですよね」


 ────ジェイクさんがですよね?


「そうです僕が、それで練習もやらなくなって、それからしばらくの間、ギルドの事務作業をしてたんですよね、そしたらデニスさんの方から仕事終わったら行きつけの居酒屋があるんですけど、そこに来いと、話があるからって言われて」


 ────どんな内容のお話しだったんですか?


「あの〜デニスさんも自分が現場から離れて事務仕事をしているのを見て気にはしてたみたいなんですけど」


 ────デニスさんには事務仕事に変わった理由は言ってなかったんですか?


「言ってないですね、はい……デニスさんだけじゃなくて誰にも言ってないですね、自分とマスターだけでって感じで、でも何となく分かってたみたいで」


 ────あぁ……それは、なんとなくジェイクさんの普段の雰囲気とか見て。


「そうですね……あと他のメンバーにも色々と自分の事を聞いてたみたいですけど……まぁ最初は最近どうなんだとか普通の世間話みたいな感じでしたね」


 ────変な話、あの日からお二人だけで会話した事とかはあったんですか?


「いや〜がっつり二人きりでみたいな事は無かったですね、デニスさんからは話しかけてくれたりとかは、たまにありましたけど……その時も自分は、返事ぐらいですよね」


 ────じゃあそれが、二人きりで話すのはあの日以来初めてという形ですか?


「そうですね……それで話の中盤あたりから、お前辞めようとしてるのか? みたいな話になりまして、自分もハッキリとは言わなかったですけど悩んでますみたいな事は言いましたね」


 ────それを聞いてデニスさんはどんな反応だったんですか?


「あぁ……やっぱりかみたいな感じでしたね、で、俺がこんな身体になったのは自分のせいだと思って辞めるのは辞めてくれって言われました」


 ────要するに引き止めてくれたんですね。


「そうですね……あれはチームでやっていたんだから、お前一人が抱え込む必要はないみたいな事を言ってくれて、それから俺はお前はここのギルドでエースになってもらいたいから頑張れって言われました」


 ────それらを言われた時のジェイクさんの正直な気持ちを聞かせてもらえますか?


「嬉しかったですね……そういった言葉を言って頂いた事自体よりも……自分の事を……あの……気にかけて……くれてた……って言うのが……あの……嬉しかったですね………………すいませんチョット……」


 ジェイクさんは誰にも相談せずにずっと一人で抱え込んできた十字架、しかし、それを救ってくれたのはデニスさんでした。

 ジェイクさんは、その日から肩の荷が少しだけ軽くなったといいます。


 ────それからジェイクさんはどうしたんですか?


「それから、大分気持ち的にもおちつきましたけど、それでもすぐに行動っていう訳では無かったです、それから一週間ぐらい自分の中で気持ちを整理して、自分の中で大丈夫だろうという所まで気持ちを持っていって改めてマスターに現場復帰のお願いをさせてもらいました……それからはもうガムシャラに頑張って、まぁ頑張るのは当たり前なんですけど……デニスさんにね、エースになれよって言われちゃいましたからねハハハ……」


 インタビューの最後に少しだけ我々に笑顔を見せてくれたジェイクさん……その顔は前を向き歩みを進めた晴れやかな表情でした。

 そして夜の9時、デニスさんが仕事から帰ってきました。

 朝の8時から仕事に出掛け約13時間、今日の依頼内容はスライム討伐1匹200リッド、今日のデニスさんは約63匹を討伐してので合計12,600リッド程、そこから報酬の1割を仲介料として引かれて11,340リッドが今日の報酬。


 ────お疲れ様です、お仕事が終わるのはいつもこのぐらいの時間ですか?


「そんなこともないけど、今日みたいなある程度時間をかければ稼げるような仕事は今日みたいに粘ってって感じ」


 ────今日、ギルドの方々にインタビューをさせてもらいましたけど。


「……辞めろとか言ってんでしょどうせ」


 ────……周りの目とかは気になったりはしないですか?


「別にしないよ関係ねぇじゃんだって、コッチは周りに迷惑かけない為に単独で仕事してるし、とやかく言われる筋合いはないよ」


 そう突っぱるデニスさん……しかし……


「まぁでも本当に心配もしてくれてんだろうけど……そういう所は素直にありがたいと思う様にはしてるけどね」


 ────ジェイクさんにもインタビューさせて頂いたんですけど。


「あぁ……ジェイクね」


 ────ジェイクさんを引退から引き止めた時の事をお聞きしても。


「やっぱりアイツはまだまだこれからの人間だし、実際に俺は気にしてないって言うのは退院した時から言ってるし、それにアイツは自分のせいで俺がこんな身体になったって思ってるみたいだけど、じゃあ責任とって辞めますみたいな事になったら俺が辞めさせたみたいになるから」


 ────……確かにそういう見方もできますよね。


「でしょ? だからお互い様なんだよ」






















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