第2話 とある剣士の後遺症〜周りと自分と〜②
朝の素振りも終わり、取材班をデニスさんが自宅に招いてくれた。
「ちょっと、散らかってるけど」
────おじゃまします。
築34年木造2階建てのアパート、1LDKのスペースで、デニスさんはここに夫婦と子供2人の4人家族で暮らしています。
「どうも、いらっしゃいませ」
────あっどうも、お邪魔します、奥様ですか?
「カミさんのターナー」
「今回は主人がお世話になります」
────あっ! こちらこそ。
「悪い、ちょっと俺シャワーだけ浴びちゃうから、後はカミさんと」
────あっ! 分かりました。
という事で、スタッフがデニスさんの奥様、デニス・ターナーさんにインタビューをする事に。
────ご主人とは、出会いはどこで?
「……主人には聞いてますか? なんであの身体になったのか?」
───はい、一通りは。
「私、そこでバジリスクに襲われた村の出身なんです」
────あっ! そうなんですか。
ターナーさんは、デニスさんが入院リハビリ生活を余儀なくされる中、デニスさんを必死に介護し困難を乗り越えました。
「それで私の方から、これからもアナタを支えたいと思うので結婚して下さいって言いました」
しかし、デニスさんは……。
「その時あの人に言われたのは、君がそんなに責任を感じなくてもいいと、俺はこの仕事が好きでやって結果的にこうなったしまっただけだからって……私も分かりました……私も好きにします、だから私と結婚して下さいって言ってね、そしたら勝手にしなよって、ここだけの話ね……口ではあぁ言ったけど満更じゃなかった感じでしたけどねフフフ……」
あの日から、デニスさんを支えると決めたターナーさん。
しかし、今のデニスさんの報酬は新人剣士並であり家族4人で暮らしていくのに不安はないのでしょうか?
────旦那さんには、引退の話などは……?
「それとなく何度かは……でも結局あの人が最終的に決める方がいいから、あんまりしつこいと怒りますしね」
────生活に不安とかは?
「不安は……無いこともないですけど、だけどどこの家庭だっていつどうなるか分からない訳じゃないですか、しかもウチの場合は剣士でしょ? たがらある程度はしょうがないと思う様にしてます」
「お待たせしました〜」
デニスさんがシャワーから出てきました。
────この後の予定は?
「ギルドに出勤します」
出勤のために手荷物の忘れ物チェック、そして何より重要なのは、防具を装着する前に、傷や動きの確認を1時間以上かけて点検します。
「行ってきま〜す」
取材班も出勤を同行させてもらった。
────いつも出勤の時にこれだけ念入りに確認するんですか?
「うん、まぁ昔からじゃないけど俺もあの日から神経質みたいになってさ」
取材班はここで、これまで自分を支え続けてくれた妻、ターナーさんについて質問してみた。
────奥様と話させていただきましたけど。
「ちょっと、いいよ奥さんで」
────奥さんはデニスさんにとってどんな存在ですか?
「う〜ん、古臭い考えかもしれないけど、彼女がいるから自分も好き勝手できているんで、やっぱりね感謝は勿論してるよね……だからって言うんじゃないけど国家附属騎士団の話も1番揺らいだのはやっぱ家族だよね」
────収入も全然違いますもんね。
「そうだよね……やっぱり断る時に家族の顔がチラッと浮かんだもんね……あっでもマスターの顔はその時は浮かんで来なかったなぁハハハ……ひでぇよな」
そして、ギルドに到着しました。
「おはようー」
「おはようございます」
「おはようっす」
「ウィッスー」
朝、受付やメンバーと挨拶を交わし早速依頼書の貼られたボードに向かい真剣に見つめるデニスさん。
30分後……
「……これかな?」
ようやく決めた依頼書を受付に持っていき、手続きを行った後、現場に向かうデニスさん。
「じゃあ、夜帰って来るから」
取材陣はギルドのメンバーにデニスさんについて話を聞く事に。
────すみません、今お時間大丈夫ですか?
「はい、少しなら大丈夫ですよ」
最初にインタビューに答えて頂いた受付担当のエミリー・マーチさん。
────デニスさんは、普段はどういった方ですか?
「う〜ん……私まだここに来て4年目なんですけど、最初は結構ベテランというか中堅の方より少し上って感じなのに、新人さんが受ける様な仕事の依頼ばかり受けててなんでだろう? と思ってたんですけど後で事情を聞いてあぁそうなんだって、でも全然、ネガティブなイメージがないというかいつも明るい感じで自分とも接してくれますし、やっぱりそういう所は尊敬してますね……でも、奥さんの事を考えると、どうなんだろうみたいな所もありますけど……」
次にインタビューを受けて頂いたのは、デニスさんの所属しているギルドマスターのアール・リドリーさん。
────デニスさんは、ここのギルドさんに所属して何年目なんですか?
「アイツが来たのは……9歳の時だったから40年近くなるよね」
────そんな子供の時から何ですね。
「そう、アイツの剣の師匠が子供のうちから実践を積ませてやりたいっていう考え方でさ、今の時代じゃあ考えられないけど、そういう叩き上げに近い事をやらせてたのはアイツの世代が最後ぐらいじゃない?」
────そうなんですね……だから考え方とか性格的な部分もそういう所の影響もあるですかね?
「変な所で頑固でしょ? だからしょっちゅう喧嘩してるよ」
────国家附属騎士団の時もそうでしたか?
「普通さぁ断るか? いや俺も相談しなかったのは悪かったけどさ……コッチも面子ってもんがあるじゃない? いや俺もね古い人間だからさアイツが現役に対する想いっていうのも分かるけど……マスターとしては面倒見る立場の人間な訳だよ、親だよ親、アイツの身体の事もあるし、アイツだって女房子供食わせていかなきゃならないし、後日、国王に断られたって聞いて顔が真っ青になったよ……申し上げございませんって床に
あくまでも現役にこだわるデニスさん……、しかし周りの考えはやはりデニスさん本人や家族の事を思えばこそ、デニスさんには同意できない部分もあるようで……最後にこの方にもインタビューを。
────インタビューを受けて頂いてよろしいんですか?
「はい……大丈夫ですよ」
ジェイク・ミルドンさん……彼はあの日、デニスさんにバジリスクから守ってもらった張本人なのです。
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