第二話 ナナとの別れ
「ナナ」が最後の大病をするまでに何度も怪我や病気をしました。ナナは、その都度、リストラされた私に新しい仕事をプレゼントしてくれたのです。ナナの動物病院の治療費が必要になると、新しい仕事が決まりました。ナナの通院費はナナ自身がその都度、稼いでいた様な気がしてなりません。でも今回の大病はナナが用意していた失業保険でされたような気がします。
バブル崩壊以降、定職から離れた私は、この時まで失業保険さえ無縁な短期の仕事を余儀なくされていました。
「ナナ」は大病後、わたし達夫婦を傍から離しません。
仏前の前で読経する時、ナナはほっぺを膨らませ上機嫌の表情を浮かべいつも密教の行に参加していました。彼女は「般若心経」のお経が大好きなようです。
ナナの病名が慢性腎不全と診断されてから半年後、神さまの子猫ナナに別れの時が刻一刻と近づいていました。
点滴の回数が増え体重は健康時の半分くらいになり、次第に食欲も無くなりました。九州から購入した奇跡の水に縋りナナの口に水だけを与え飲ませたのです。その甲斐あって毛並みだけは健康時のように生き生きと変わったのです。
サッカーのワールドカップ決勝戦の日、ナナは虫の息で苦しそうな呼吸を大きく始終繰り返しています。息のある内に抱き抱え外に連れ出しました。ナナの瞳にはもはや反応がありません。決勝戦が決着した瞬間、ナナは夫婦の般若心経に送られ天国に旅立ちました。
半年もの闘病生活は人間で喩えると二年か三年に相当すると獣医が話しましたが慰めになりません。
ナナをゆうパックの箱に入れた翌日、近くの動物霊園のあるお寺に連れて行きました。
「生きているような毛並みですね・・・・・・」と寺の担当者に言われ嗚咽しました。
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