第35話 2周目の裏ボスと茜さす花畑


「うわぁぁぁ!!めっちゃ綺麗っス!!」



土手を駆け上がって視界に広がる菜の花畑にリオネが歓声を上げる。

カフェを出たあと俺達は商店街を見て回り、最後にフォルネ街の名物である菜の花畑を見に来ていた。


見渡す限りの平原を覆いつくす一面の黄色が、地平線の夕日に照らされてツヤツヤと輝いている。まさに絶景だ。



「これは……綺麗やな」


「…………」



サリーも感動しているようでしみじみと菜の花畑を眺め、ユーリは目を見開いて無言で目の前の景色に見入っている。……そんな俺も、夕暮れのオレンジに染まった黄色の世界に、思わず言葉を失ってしまう。



「デュース先輩っ!! 散策道があるっス!! 行きましょうっ!!」



先に土手を降りたリオネに呼ばれて下を見ると、ブンブンとこちらに手を振るリオネの姿が見える。……なんか、マジで犬っぽいな。というか、今日1日で結構歩いたと思うんだけど、元気だな。



「おーう、ちょっと待ってろー!!…………ユーリとサリーはどうする?」


「あはは、リオネちゃん元気やな。お姫さまも疲れたみたいやし、ウチはここで待ってようかな。どうする?」


「はい、私もサリーとここで待ってます。行ってあげてください」


「そうか。んじゃ、大型犬にちょっくら付き合ってやるか」


「大型犬て。まあ、何となくわかるんやけど」


「ふふふ、リオネちゃん。確かにそんな感じするかも」



土手に座って菜の花畑を眺める2人に見送られて俺は土手を降りる。

近付けば近付くほど菜の花畑は輝きを増していき、地平線のオレンジ色が濃くなる。



「もー、遅いっスよ!!」


「すまん、すまん。それにしても、絶景だな」


「そうっスね…………ほら、散策道に行くっスよ!!」



リオネがそう言って俺の手を引っ張る。

2人っきりの夕焼けに照らされた散策道に、俺達の影が伸びていく。



△ ▼ △



リオネと黄色の海を歩いて散策道の突き当りまで来る。

地平線まで続いているかのような菜の花の絨毯の景色に圧倒される。



「今日、ここにデュース先輩と一緒に来れて良かったっス」



そう言ってリオネの青い瞳が俺を捉える。

彼女の浮かべる淡く、優しい微笑みは、夕暮れの景色と相まって今にも消えてしまいそうなほどに儚かく見えて、俺は思わずリオネの腕に手を伸ばす。



「デュース先輩? どうしたっスか?」


「あの、なんというか……」


「?」



リオネはキョトンとした表情を浮かべる。

俺はそんなリオネの真正面に向き合って彼女の青い瞳を見つめる。



「この間、洞窟に助けに来てくれてありがとな。正直、嬉しかったよ」


「今さら何言ってるっスか。私はデュース先輩の相棒バディなんスから当然っスよ。それに、先輩が負けるとも思ってないっス。…………でも、ちょっと心配だったっス」


「悪かったよ。すまない」


「そう思うなら、もう私の前からいなくなったりしないでください。」



少しだけ潤んだリオネの瞳が近づいてくる。

俺は動けないまま、ただ彼女の顔が近づいてくるのを眺めるしかない。



互いの唇が触れる熱い感触とともに2人の間に夕日が差し込む。

チラリと横目に見える2人の影が重なった。



「約束っスよっ!!」



顔を話したリオネが真っ赤な顔でそう言う。

そのまま彼女は俺の反応も見ないまま散策道を戻って走り去ってしまう。


1人取り残された俺は、何も言えず、ただ先程の熱い感覚を反芻するしかない。

コルレ嬢と言い、リオネと言い、まるで嵐のように去ってしまう。



「…………マジで、どうすりゃいいんだ」



ポツリと呟いた俺の独り言は、誰にも聞かれずに、ただ風に乗って菜の花を揺らす。風に揺られてキラキラと輝く花畑のなか、俺も散策道を通ってリオネを追いかけて歩き出すのだった。




(第2章「分離拡張空間:地底龍ダンジョン」完)

―――――――――あとがき―――――――――


これにて第2章は完結です!!

ここまで楽しんで頂けたでしょうか?


ストーリーの続きが気になる方は、この機会にぜひ、画面下の★★★で評価して頂けると幸いです‼


まったく毛色の違う作品も書いています。

良ければそちらもご一読いただけると作者が喜びます。


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それでは引き続き物語をお楽しみいただけると幸いです!!

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