第25話 2周目の裏ボスと各々の戦闘
「しぶといッスね!!」
リオネちゃんの振るった
アタシはリオネちゃんと2人でコルレ会長の差し向けた刺客と戦ってる訳だけど、正直ほぼリオネちゃん1人で十分な程に戦えている。リオネちゃんは
「逃がさないっス!! ―――アイズ・ウェブ」
吹き飛ばされた先で哀れな刺客が氷蜘蛛の巣に捕らえられる。
既に20人程いた刺客の半分以上が氷漬けにされている。リオネちゃんは炎魔法と氷魔法の相反する属性の魔法を得意にしているみたいで、敵はさっきから炙られては凍らされてを繰り返している。……味方の立場で良かった。ウチは炙られたくも、凍らされたくも、殴り飛ばされもしたくないからね。
その時、リオネちゃんの背後で刺客の1人がカースドピアを発動する。
毒属性をまとった刺突魔法がリオネちゃんに迫り、攻撃が当たる直前でそのまま消滅する。
「いや、理不尽ってこういうことを言うんやね」
「? なんか言ったっスか、サリーさん?」
「いや、なんもないで」
リオネちゃんが纏う不可視の鎧、身体保護魔法マナ・アーマード。
魔法の素であるマナを圧縮して作られるその鎧は、マナの濃度が自身より低い全ての魔法を無効化してしまう。そしてリオネちゃんの実力からして、鎧に打ち勝てる魔法を放てる刺客は見当たらない。……つまり、現状ではリオネちゃんへの魔法攻撃はすべて無効になるってこと。
「ホント、味方で良かったわ」
アタシ含めて暗殺が中心の刺客は遠距離攻撃か超近距離の暗殺がメインでリオネちゃんとの相性が悪すぎる。魔法は効かないし、近づこうとすれば
「これで終わりっス!!」
最後の1人が氷漬けにされて戦闘が終了する。
氷蜘蛛の巣の魔法の効力は約3日間。当分彼らが解放されることはないだろう。
「邪魔者は消えたっス!! サリーさん、行くっスよ!!」
▼ △ ▼
「……天下のオルタフェザード兵がこんなもんか」
俺の目の前には死屍累々のオルタフェザード兵たちが倒れている。
人類の敵である魔王の片割れ相手に公爵家お抱えの兵士達が敵うはずもなく、俺にシバかれまくった末に今は凍結魔法の餌食となって身動きが取れなくなっている。ちなみに殺してはいない。下手に恨まれても厄介だからな。
「やってくれたね、デュース君」
「少し余裕がなくなってきましたね、会長。次は何ですか?」
「デュース君こそ、余裕でいられるのも今のうちだよ。行きなさい、眷属たち」
コルレ嬢の魔法が発動し俺の周囲の土が盛り上がって次々と大きな人型になっていく。
これは……土魔法と召喚魔法の合わせ技だろうな。流石にこのあと5大公爵家を継ぐだけのことはあるな。土でできた甲冑姿の騎士達が俺を囲むように剣を構える。
「悪くない魔法ですね。だけど俺を舐めすぎですよ、会長。――ウィンド・カッター」
周囲の土製騎士たちが真っ二つになって崩れ落ちる。
あえて初級魔法で片を付けたが、少し性格が悪かったかな。
普段は魔法の基礎である火・水・風・土の魔法をあまり使わないようにしているが、逆に力量差を見せるにはもってこいなのかもしれない。あと、わざわざ真面目に相手するのが面倒くさい。
「会長、面倒なんでさっさと全力を出してください。このままチマチマやってもジリ貧になるだけですよ。それこそ、家訓みたいに失敗はしたくないでしょう?」
「う、うるさい。召喚に応じなさい、アロー・ドラゴン」
詠唱とともに巨大な骨のドラゴンが召喚される。
コルレ嬢は召喚魔法が得意なようだ。アロー・ドラゴン、読んで字の如く骨でできたドラゴン。種族の中では真ん中くらいのランクの種だが、魔法で召喚できる生物の中ではかなり上位な方だろう。これがコルレ嬢なりの全力なのかな。
「彼を倒しなさい」
《Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!》
コルレ嬢の命令に呼応してアロー・ドラゴンの咆哮が洞窟に響き渡る。同時に骨の翼が横殴りに迫ってくる。ひとまず攻撃を受けてみるか。
「―――イージス」
金属がぶつかるような音が響いてドラゴンの翼が弾き返される。
見た目に反して意外と衝撃の感触は軽かった。この程度ならわざわざ盾魔法を使うことも無かったな。ということはアロー・ドラゴンの中でもかなり弱い方なのかもしれない。てことは………
「―――クロックワークス・フローズン」
氷が軋む音がしてアロー・ドラゴンが動きを止め………そのまま停止した。
時間魔法耐性はなかったようで、アロー・ドラゴンは完全なモニュメントと化している。
コルレ嬢はいきなりの決着に驚いてるようで珍しく口をあんぐりと開いている。兵士は氷漬けでドラゴンは石像に。これで実力差は伝わっただろう。
その時、洞窟に監視役であろうカラスの一群が入ってくるのが見えた。
「コルレ会長、これで終わりですか?」
「なっ……!! それならっ!! ―――エンチャント・スプリント」
覚悟を決めた表情でコルレ嬢が突っ込んでくる。
彼女の手には銀色の短剣が握られていて、加速魔法の勢いそのままに突撃してくる。
そもそも生徒一人を暗殺するのに何故そんな覚悟を決める必要があるのかは分からない。本当ならわざわざコルレ嬢本人が手を下さなくても、たくさんいる部下達にやらせて失敗したら手を引けばいいだけなのに、何故ここまでする必要があるんだろうか。それこそオルタフェザード家の裏の家訓を本気で信じているならいざ知らず、次期公爵候補なんだからリスクを負ってまで手を汚す必要はないだろ。
「とどけっ!!」
突き出されたナイフを受け止めて手首を捻りつつ、そのまま彼女を受け止める。ふたたびのお姫様抱っこ状態になり、短剣が地面に落ちる音が響き渡る。
「会長、諦めてください」
「な、なにをするっ!!」
諦め悪くジタバタするコルレ嬢をなんとか落ち着かせる。逆にこの諦めの悪い性格が彼女を悪の公爵姫まで押し上げたのかもしれない。
「コルレ、そこまでだ。お前は失敗したのだよ」
「なっ……!!」
突然、洞窟に男の声が響き渡る。
呼ばれたコルレ嬢は驚愕の表情を浮かべて洞窟の入口に視線を向ける。視線の先ではカラスの一群が渦巻いており、やがてそれは1人の男の姿に収束する。そこにはコルレ嬢と同じ紅い瞳を爛々と輝かせた1人の老人紳士が立っていた。俺でも知っている。コルレ会長の父親にしてオルタフェザード家現当主、アルバラード・オルタフェザードの登場である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます