第24話 2周目の裏ボスと仕掛けられた罠
騒動の中心部へ俺とコルレ会長が到着する。
それに気が付いた衛兵の1人が声を掛けてきた。
「嬢ちゃんと兄ちゃん!! 何やってんだ、さっさと避難しな!!」
「
「はっ!!現在、大量の魔獣がフォルネ街西側の城壁に押し寄せています!!」
衛兵は”オルタフェザード”の家名を聞くと背筋を伸ばして敬礼をする。
俺とコルレ会長が到着した時には既に城壁に押し寄せたモンスターが街門を押し開こうとしている所だった。俺達が城壁の上に登って下を見ると無数の魔獣が殺到しているのが見えた。遠くを見渡せば、魔獣たちが列をなしてフォルネ街に向かってきているのが線のようになって見える。
そして、魔獣たちの姿はどこか痛々しかった。
「キメラか。可哀そうに。―――アステ・ディアス!!」
光の奔流が衝撃波とともに眼下の魔獣に直撃して一瞬で蒸発する。
ひとまず
「慈悲を持って終わらせてあげよう。―――トール・ロード」
眩い閃光と雷鳴の衝撃音が響き渡りキメラたちの列が炭へと姿を変える。
さて、進むとしようか。どうせ、キメラたちの発生源を潰さないと延々と襲ってくるパターンだろ、これ。………それで、まんまと俺は発生源に誘いこまれるって算段かな。多分だけど。
「さ、行きましょうか。会長」
「君は…凄まじいな」
「この程度の魔法は今更ですよ。会長は俺の後ろで見ていてください」
「うむ。って、なにをっ!!」
俺はコルレ嬢の手を掴むとそのまま城壁を飛び降りる。
落下中にコルレ嬢を抱えると、そのままお姫様抱っこの状態で着地する。なんでそんなことしたかって? だって梯子を使って降りるの面倒くさいじゃん。あと、後ろで見張っている刺客達を出し抜けるかなって狙いもあったりなかったり。
「舌噛んでないですか?」
「だ、大丈夫だ」
「そうですか。なら良かった」
「それで、そろそろ降ろしてくれないか」
「いえ、このまま行きましょう。こっちの方が速いので」
「へ?」
俺がにっこりと笑うとコルレ嬢が珍しく素っ頓狂な声を出す。前方を見れば後続のキメラたちの姿が見える。さあ、張り切っていこうじゃないか。
「会長、引き続き舌を噛まないように気を付けて下さいね。んじゃ、行きますよ。―――アステ・ディアス」
光の奔流が大地を駆け抜け、遥か前方まで一直線の道を作る。
俺はコルレ嬢の返事を待つことなく全速力で走り出す。キメラたちが行進してきた方向にひたすら進んできゃ、そのうち発生源に着くだろ。俺は加速して後ろに控えている刺客達を一気に振り切る。さあて、追いつける奴はいるかな?
▼ △ ▼
「さっきの魔法ヤバかったっスね!!」
「せやね、なんというかアレは規格外やわ。リオネちゃんも凄い人を掴まえたね」
「当然っス!! デュース先輩が一番っスから」
「はは、アイツも愛されてんね」
フォルネ街からぐんぐん遠ざかるデュースの姿を2人で眺める。
再びの爆音が鳴り響きアタシたちのところまで風が届く。その時、城壁の街門が開け放たれて20人くらいの人影がデュースを追いかけるように駆けていき、同時に上空ではカラス達もデュースを追いかけていく。……これだけの戦力投入ってことはコルレ会長、本気やな。
「リオネちゃん、何してるん?」
横を見ればリオネちゃんが足を伸ばしたり上げたりしている。思わず聞いちゃったけど、考えてることなんて言われなくても分かる。
「何って、屈伸っスよ?」
「なんで?」
「そりゃ、追いかけるからっスよ」
やっぱそうよね。うん、分かってました。
アタシにもまだ刺客が張り付いてる間はリオネちゃんの傍から離れられない。それはつまり、アタシもリオネちゃんと一緒にデュースと会長を追いかけなければいけないってこと。ここまで来たら付いてくしかない。
「そうやと思った、ならリオネちゃん、早いとこウチラも行こっか」
「はいっス!! デュース先輩っ、リオネが行くっス…………って、なんスか?」
アタシ達がデュースを追いかけようとしたところで邪魔が入る。
10人の刺客がアタシとリオネちゃんを取り囲む。今だったらモンスター襲撃のどさくさに紛れて処理できるし、なりふり構ってらてないって所やな。リオネちゃんも含めて、どうやら逃がす気はないらしい。
「邪魔っス。フレイム・ランス」
誰よりも先に攻撃をしたのはリオネちゃんだった。
業火の槍が降り注ぎ包囲がわずかに崩れる。リオネちゃんは腰の剣に手を掛けると、そのまま抜き放つ。それに応じるように面食らっていた刺客達も武器に手を掛ける。
「こんなとこで油売ってる暇はないっス。さっさと倒して先輩を追うっスよ、サリーさんっ!!」
「りょーかいっ!!」
▼ △ ▼
「はい、到着」
「う、うむ」
俺はお姫様抱っこ状態のコルレ嬢を降ろして魔獣の発生源を見る。
それは
……まあ、ここがどこか分かってんだけどね。
なんせこの場所って、これから復活する魔王城の正門前なんだもん。
「コルレ会長、もういいでしょう」
俺はキメラ魔獣を生み出す魔石を掴んで、そのまま粉砕する。正直、不完全なツギハギで魔獣を使役するのに俺はかなりムカついている。
「ん? 何のことだい?」
「もうワザとらしい芝居は十分ですよ」
俺は洞窟の奥の壁に背を向けてコルレ嬢に向き直る。
既に俺の索敵魔法にはこの洞窟を囲む50人以上の刺客、と言うかオルタフェザード軍を捕捉している。加えて監視生物や魔獣もいるようで、普通の学生を狙うには過剰戦力が揃ってると言わざるを得ない。どうやらコルレ嬢も本気らしい。
「やはり勘付かれていたか。流石だね。どうやら私はデュース君を甘く見ていたようだ」
「御託は十分ですよ。さっさと外にいる戦力を引き入れてください。この場における挑戦者はコルレ会長、貴女だ。貴女の持つ、全てを持って挑んで来てください」
俺は軽く髪をかき上げて魔痣を晒す。
魔痣を見たところでコルレ嬢はそれが意味することを理解できないだろうが、様式美みたいなもんだ。ドクンと痣が疼き、全身に魔紋が浮かび上がっていく。さあ、こっちも準備万端だ。思いっきり暴れようじゃないか。
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