第6話 手紙の解読
美代子と佐代子が同一人物である可能性が浮上し、僕の中でこの謎を解き明かすための情熱がますます燃え上がっていた。美代子が名前を変えた理由、そしてその背景にある物語が、絵と手紙にどのように結びついているのかを突き止める必要がある。
そんなある日、僕のもとに美術館から電話がかかってきた。以前預けた手紙の解読が進み、いくつかの新しい情報が得られたという知らせだった。
「手紙の一部が解読できましたので、ぜひ一度お越しください。」
僕はすぐに美術館に向かい、古文書修復の担当者に会った。彼女は僕に手紙を手渡し、解読結果を説明してくれた。
「この手紙は非常に古く、インクがかなり劣化していたため、完全に解読することは難しい部分もありました。しかし、いくつかの単語やフレーズは読み取ることができました。」
彼女は手紙のコピーを見せながら、読み取れた部分を示してくれた。まず、冒頭に書かれていた「佐代子」という名前は確かにそう読めることが確認された。さらに、手紙の中には「圭介」という名前も出てきており、これが伊藤圭介を指していることは明白だった。
「解読できた部分には、『戦火の中で…』『真実を隠すため…』というフレーズがありました。どうやら、この手紙は非常に個人的な内容で、何か重大な秘密が記されていたようです。」
その言葉に僕の心臓が高鳴った。手紙の内容が戦争の混乱期における何らかの秘密と関係していることは間違いなさそうだった。しかし、その具体的な内容はまだ完全には明らかになっていなかった。
「そして、もう一つ重要なことが分かりました。この手紙は二つに分かれている可能性があります。つまり、もう一つの手紙が存在し、それが全ての真相を語る鍵となるかもしれません。」
二つに分かれている?その言葉に僕は驚いた。祖父の家で見つけた手紙が一部でしかなく、もう一つの手紙がどこかに隠されているというのか?
「もう一つの手紙が見つかれば、全てのピースが揃うかもしれません。しかし、その手がかりはまだ見つかっていません。どこかに隠されている可能性があります。」
僕は思い返した。祖父の家にはまだ探していない場所があるかもしれない。手紙が見つかった蔵の奥深く、もしくは祖父の話から何か手がかりを得られるかもしれない。
家に戻った僕は、すぐに祖父に会いに行った。これまで話してこなかった祖父の記憶の中に、何か重要なヒントが隠されているかもしれない。
「おじいちゃん、手紙の一部が解読できたんだけど、もしかするともう一つの手紙があるみたいなんだ。心当たりはないかな?」
祖父は少し考え込んだ後、何かを思い出したように頷いた。「そういえば、昔、疎開先から持ち帰ったものがもう一つあったかもしれない。それは小さな箱に入れて、蔵の中にしまっておいたような記憶がある。だが、その箱はもう何十年も開けていないから、今も残っているかどうか…。」
その言葉を聞いた瞬間、僕は再び蔵に向かう決心をした。小さな箱、それがもう一つの手紙を隠しているのかもしれない。全てのピースを揃えるために、僕はその箱を見つけ出す必要がある。
次の日、僕は祖父の家の蔵に向かい、再び探索を始めた。埃にまみれた古い家具や雑多な物の中を掘り起こしながら、小さな箱を探し続けた。そして、ようやく蔵の奥深く、埃をかぶった小さな木箱を見つけた。
その箱をそっと開けると、そこにはもう一通の手紙が静かに眠っていた。まさにこれが、全ての謎を解く最後のピースとなるのかもしれない。
手紙を手に取った瞬間、僕の中で何かが動き出した。この手紙には、どんな真実が隠されているのだろうか。美代子と佐代子、そして伊藤圭介の間に何が起こったのか。次回、この手紙を解読し、全ての謎が解き明かされることを期待して、僕は家路についた。
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