第1話 蔵の中の発見

久しぶりに祖父の家を訪れたのは、夏の終わりのことだった。庭の片隅にある蔵には、幼い頃からの秘密が詰まっていると、子供心に感じていた。古いものには何か特別な力が宿っている気がしてならなかったからだ。


その日は、特に目的もなく、ふとした興味から蔵の扉を開けた。薄暗い室内には、古びた家具や段ボール箱が雑然と置かれている。埃っぽい空気に目をしばたたきながら、奥へと進んでいくと、いつもは見過ごしていた古い布に包まれた大きな物体が目に留まった。


「何だろう…」


直感的にそれがただの家具ではないと感じた僕は、恐る恐る布をめくり上げた。そこに現れたのは、予想だにしなかった光景だった。一糸纏わぬ女性の見事なヌード画。美しい顔立ちと柔らかな曲線が、まるでそこに生きているかのようにリアルで、時間を忘れて見入ってしまった。


しばらくの間、僕はその絵に釘付けになっていた。祖父の家にこんな絵があるとは知らなかった。興味と驚きが混じり合いながら、僕はこの絵についてもっと知りたくなった。そこで祖父に尋ねてみることにした。


「おじいちゃん、この絵、知ってる?」


祖父は眼鏡越しに絵をじっと見つめ、小さく頷いた。「ああ、それか。随分と昔のことだが、確か戦時中に譲り受けたんだったかな…」と、どこか遠い記憶を辿るように話し始めた。しかし、詳しいことは覚えていないという。


「これ、貰ってもいいかな?」


「もちろんだとも。君が興味を持ってくれるなら、大事にしてくれ。」


僕はすぐにその絵を持ち帰ることにした。部屋の中央にそっと立てかけ、もう一度じっくりと見つめた。すると、後ろから何かがポロリと落ちた。床に落ちたそれは、一通の手紙だった。


「なんだこれ…?」


興味深く手に取ると、「佐代子」と記された文字が目に飛び込んできた。しかし、それ以外の文字はかすれていて、ほとんど読めない。奇妙なことに、祖父に尋ねても、この手紙のことは全く覚えていないという。


僕の中で、絵とこの手紙が結びつき、何か大きな謎が隠されているように感じられた。戦時中の出来事や「佐代子」という名の女性が一体何者なのか、そして、この見事なヌード画は何を意味しているのか。


そう考えると、僕の胸の中に新たな探求心が芽生えた。この絵と手紙にまつわる謎を解き明かすために、僕は調査を始めることに決めた。


それが、すべての始まりだった。

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