第35話
四人連れ立って向かった校門前には、人だかりが出来ていた。
近所で見たことがある制服もあれば、見たことがない制服。はたまたは私服姿の年上と思われるの姿もあった。
一人余すことなく男であり、みなが何かを探すようにキョロキョロと校内を眺めるようにしていた。
怯えた様子の陽川を不思議に思いながらも、吉岡と二人で背中で庇うようにして歩いた。
その途中、連れ立ってやってきていたと思われる二人組の会話が耳についた。
「ストリーちゃん。どこにいるんだろうな」
やはりこの人だかりは、噂通りストリーを探しに来ている群衆のようだ。
少なく見積もって四十人ほどはいそうだ。
なぜ陽川がストリーを探しにきた群衆に怯えているのかがよくわからない。普段の陽川なら、『邪魔よ。私とエマの通り道を開けなさい!』とバッサリ切り捨ててしまいそうなものだが。
なんなら、通り抜けるだけに収まらず、『ここは天下の往来よ!邪魔だから散りなさい!』と威嚇して追い払ってしまうまである。
天下の往来ならば彼らがそこに存在していても問題ないだろと言う話になってしまうが、そこには突っ込まないで頂きたい。
チラリと陽川の方に目を向けると、俺の予想に反して顔を伏せて歩き、いつもの覇気はない。
その後ろを歩く矢野さんはと言えば、いつもの様子でポワポワと集まった人だかりを不思議そうに見ていた。
この様子だと、何らかの事情を親友である矢野さんにも話していないようだな。
陽川を気遣いながら進む中、行く手を阻むように、俺達グループの前に、他校の制服に身を包んだ三人組が立ちはだかった。
相手をしている暇はないと、三人組を避けて通ろうとするも、その三人組は俺達の進路に体を入れて阻む。
もう一度逆に進むも進路を塞ぐ。
何をしたいのかも分からないし気味が悪い。出来ることなら相手にしたくないが……
そんな中、三人組に怯む事なく矢野さんがツカツカと眼前まで歩いていった。
そして、いつもの様子でポワポワとした口調で話しだした。
「私のお友達があまり気分が良くなくて、早く帰らせてあげたいの。だから、道を塞ぐのはやめてくれない?」
そんな言葉を聞いて、三人組は矢野さんを舐め回すように見た後、ボソボソと会議を始めた。
「こいつ顔はいいけど、声はストリーちゃんじゃないな」
「ストリーちゃんはもっとハキハキとした声だし。こんなにおっとりした話し方じゃない。よって別人と思われる」
「同意。ストリーちゃんはもっと低身長で、幼女みたいな見た目だと解釈してる」
「「たしかに」」
どうも気持ちの悪いやりとりが行われているが、彼らの眼鏡には叶わなかったようだ。矢野さんも会話に引いているのか、二、三歩後退りしてきた。
友達思いで優しい矢野さんの良さが分からないなんてなんて、なんてかわいそうな奴らなんだ。
「じゃ、じゃあ通らせて貰うよ」
少し引きつった笑顔で三人組にそう告げると、矢野さんはツカツカと歩いて行く。
三人組もそれを許容したようで、矢野さんは通り抜ける事に成功した。
やり過ごした所で、矢野さんは立ち止まり、こちらに向かって手招きをした。
なんて愛くるしい姿なんだ。
一瞬見惚れそうになったけれど、首を三度横に降って気持ちを切り替えると、陽川に声をかけた。
「行くぞ」
「うん」
陽川の弱々しい返答に、どうも調子が狂う。
まあ、どんな事情があるにせよ、今この場をやり過ごせば陽川達ともおさらばだ。
俺が気に病む事もない。
あくびをしながら陽川の前に立つ吉岡と共に、三人組を通り越して、矢野さんの元にたどり着き、安堵して四人で再度前に進もうとした時、後ろからまた声をかけられたのだ。
「ちょっと待て。そっちの女の声をまだ聞いてないぞ」
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