第25話 先輩は大古墳に眠る秘宝が欲しいそうです! part3

私たちはニャンタさんに導かれて、

森の中にひっそりと

謎めいた古墳へと向かい始めた。


古墳(こふん)は、

権力者の墓として造られたもので

巨大な墳墓のことを指す。


古墳には副葬品(武具、装飾品など)が納められており、

これらは埋葬された人物の、

社会的地位を示しているのだ。


この森の古墳の形状は四角錐台で、

四方に向かってゆるやかな傾斜を持つ

階段が頂上に続いていた。


古墳の四隅には巨大な石像が立っており、

それぞれが神話上の生物をかたどっていた。


これらの石像は、目が赤く輝き、

まるで古墳を守護するかのような威圧感を放っていた。

動く石像じゃないことを祈っとくっす。


「後輩ちゃん、

 この建物の中には、

 一体何が隠されているんだろうね!」


「なんなんすかね?

 アンデットの親玉の

 根城とかじゃないっすかね?」


一方、少し離れた場所では

カインとレオが話し合っていた。


「なあカイン

 何かの墓のように見えるが

 あの建造物なんだ?」


「俺にも分からん、 

 高いところから森を見渡せそうだ

 せっかくだし、登ってみよう」


考古学的観点から見ても、建物の素材は

その時代や地域の宗教や信仰を表すことがある。


たとえば、日本では木材を使った建物が多く見られるが、

これは仏教の輪廻転生の思想が

影響しているためだと考えられている。


一方、石造りの建物は、

永遠の命や不朽を象徴することが多い。


エジプトのピラミッドはその典型例であり、

石で構築されていることから、

永遠の命を信じる宗教観がその背景にあるのだ。


つまり、この古墳は死んでいるはずなのに活動し続ける、

アンデットにとっては、

まさに理想的な拠点なのだろう。


私たちが古墳の目の前に到達すると、

そこには長い階段がそびえていた。

古墳は加工されてない固い鉱石でできているようだ。


長い階段がそびえ立っており、

その先には頂上へと続く道が続いている。


入り口は見当たらず、

どうやら墓への唯一の入口は、

階段を登った先にあるらしい。


「よしお前ら、ここを上るぞ!」

「私が頂上まで一番乗りだもんね」


先輩は元気よく声を上げると、

誰よりも早く階段を駆け上り始めた。


「なんでミラクルちゃん、

 あんなに元気なの?」


「いちよう私達Aランク冒険者よね

 あの子、スタミナがおかしくない?」


「俺も流石に、

 足が重くなってきたぜ

 あいつ疲労を知らないのか?」


先輩は後輩ちゃんを背負ったまま、

森の中を長時間移動していたにもかかわらず。

階段を全速力で駆け上がっていた。


疲れた素振りも見せず、

笑顔で進んでいく底知れぬ体力に、

団員たちはただただ驚いて言葉を失っていた。


やがて、私たちは頂上に到達した。

そこからは、森全体を見渡せる絶景が広がっていた。


「後輩ちゃん!

 この高さだと森の全貌が見渡せるよ!」

「本当に一面、森だらけですね……」


「よし、とりあえずテント張るか!

 朝出発するのが早かったから

 今の時間は、大体12時ってとこだな」


あのニャンタさん、ここにテント張る行為は、

まるで墓の上でピクニックをするようなもんっす

私が墓の主なら激おこっすよ?


とはいえ、私も一休みしたかったので、

その考えは心の中でひっそりと呟いとくっす。


テントを設営し終えた頃、

暁の幻影団の他のメンバーも

ようやく階段を登りきって合流した。


みんな疲労の色を隠せない様子だった。

やっぱり先輩の体力がおかしかったんすね。


「ねえ、みんな!

 あの遠くの木のてっぺんに

 大きな赤い旗が掲げられているよ!」


指差した方向を見ると、

確かに赤い旗が風になびいていた。


「本当だわ!カイン、

 あれって大規模調査の時の

 森の出入り口の目印だよね?!


「ニャンタちゃんありがとう

 私たちを森の出口まで導いてくれたのね」


いやいや、違うっすよ。

私たち、危険な場所に連れてこられたんすよ!。

ホラー映画だったら、絶対に次は犠牲者が出る流れっす。


あたりを注意深く見回していると、

この古墳が異様にきれいに、

保たれているのがわかった。


普通、こんな古い建造物は

自然にまかせて荒れ果てるものなのに…


そんな疑問を抱えながら周囲を探索していると、

あるものが視界に入った。

それはまさしく、古墳への入り口だった。


内部は漆黒の闇に包まれていて、何も見えないが、

その先に何かが潜んでいるような、

不気味な気配が漂っていた。


「森の出口までの道がわかってよかったわ」


「なあ、あの赤い旗の位置から見渡したら、

 この古墳が見えるはずじゃないか?

 なんで今まで誰も発見しなかったんだ?」


「確かに、不思議ね。

 あっちのほうが高い位置にあるんだから

 本来ならこの古墳も見えるはずよね」


「この距離だと徒歩で森の出口まで

 あと6時間といったところか」


「このまま進めば、

 日が暮れる前に森の外に出られそうね」


暁の幻影団は、

森の出口を見つけたことで

安心した様子だった。


彼らはオリハルコンの箱をギルドに届けるため、

一刻も早く森を抜けようとしているようだ。


「あなた達、テント張ってるけど

 この古墳を調べるの?」


「なあ、俺たちと一緒にいかないか?

 この場所もなんだか嫌な感じがするし、

 明るいうちに森から出たほうがいいと思うぜ」


「俺たちは急いでるから

 このまま森の出口まで進むけど

 君たちはどうする?」


カイン達は私たちに気を使ったのか、

どうするか尋ねてくれた。


しかし、先輩たちはもう探索モード全開だった。

宝探しへの意欲で目を輝かせていて、

その冒険心を止める手立てはなさそうだった。


もうほとんど墓荒らしだが、

それでも先輩はワクワクした表情をしていた。


「私たちは古墳のお宝を探しに行くから、

 ここに残るよ!」


「そういうわけで、

 私たちはここに残るっす。

 ここでお別れっすね。さよならっす。」


私は急かすように声をかけ、

早くここから立ち去るように彼らを促した。


こんな危ない場所に留まっていたら、

ニャンタさんの計画に巻き込まれるだけっす。

早く逃げるが吉っすよ!


「そうか、俺たちも急いでるんだ

 悪いけど先に出口まで向かわせてもらうよ」


「ニャンタちゃんがいれば大丈夫だろうけど、

 夜はモンスターが凶暴になるから、

 絶対に移動しないようにね」


「お前ら死ぬんじゃねぇぞ」


まるでどこかの惑星の生き物のように、

夜になるとモンスターが凶暴になるらしい。


カインさんたちは古墳の階段を下りると、

足早に森の中へと進んでいった。


私は大きく手を振って見送った。

早くこの場所から離れて、

安全に森から脱出してほしい。


先輩やニャンタさんに巻き込まれるのは

私だけで十分っす。


「みんなさよならっすぅ!」

「また会う日まで!」


二人で元気よく叫ぶと、

ライラとエリスも笑顔で手を振り返してくれた。


「二人ともバイバイ」

「ニャンタちゃんも元気でね!」


短い間だったけど、

いろいろお世話になりました…って、あれ?


なんか私たちのほうが

彼女たちを助けていたような気がするっす…。


そんな考えが頭をよぎった瞬間、

カインが魔術「ナイトヴェール」を発動して、

全員が透明になった。


彼らはこのまま夜になる前に、

森を抜けるつもりのようだ。

これで本当にお別れだろう。


「急げ、ペースを落とすな!

 夜になっちまうぞ!」


遠くからレオの声が響いてきた。

私たちが手を振っている間に、

彼らは先へと進んでいってしまったらしい。


慌てて私たちも追いつこうと走り出したが、

突然何か見えない壁にぶつかり、

進むことができなくなった。


「ねぇ、なんか見えない壁があるんだけど…」

「カインたち、もう先に行っちゃったわよね?

 なんで私たちだけ通れないの?」


どうやら、この見えない力は

古墳から半径500メートル以内に

円状の壁を作っているようだった。


さっきまで手を振ってのんびりしていたせいで、

この見えない壁に、

閉じ込められてしまったのだ。


「これ、やばくない?

 カインの闇魔術が解ける前に

 なんとかしないと」


「あの子たちと合流したほうが

 いいかもしれないわね…

 古墳に戻りましょう」


こんな森の不気味な古墳で二人でいるより

合流したほうが安全だと判断したのだ


「このことを、

 ミラクルちゃん達にも伝えないと」


急いであの子達のほうへ引き返すことにした。

このままでは不思議な壁に、

閉じ込められたままになってしまう。


その頃、私と先輩はテントの中に入り、

座って休みしながら古墳の調査方法について

作戦会議を開くことにした。


「みんなと別れて寂しいけど

 これで宝を見つけたら

 私たちだけで独占できるね」


「ピラミッド系のダンジョンってのは

 大抵レアアイテムが眠ってるもんだ

 こりゃ期待できそうだぜ」


「危険な罠も、癖のあるモンスターも

 ゲームでは登場するっすよね

 なんだか嫌な予感がするっす」


プルルは暁の幻影団のメンバーが

去ったことを確認すると、

透明な状態から姿を現した。


私は無限水筒ちゃんから

湧き出る水をゴクゴクと飲みながら、

少しリラックスしていた。


「よし、お前たちに冒険の基本を教えてやる

 まずダンジョンに突入する前に

 アイテムを確認だ!」


ニャンタはどこからともなく

カンテラや先輩の予備の服などを取り出し、

私たちのほうの地面に並べ始めた。


「お洒落なカンテラっすね

 これ貰っていいんすか!?」


「猫界77ツ道具 シャレオツ・ルミナスだ


 光源は特殊な魔法石をセットしてるぜ

 360度照らすだけでなく、

 懐中電灯のように一か所を照らすことも可能だ」


カンテラとは

携帯用の照明器具として使われる、

ランプの一種である。


金属細工が施されていて、

なぜかニャンタさんの顔が描かれていた。


取っ手やフックが付いているので、

リュックとかに簡単に掛けられそうだ。

持ち運びにも便利なサイズであった。


前面にはレンズやシャッターのような、

ギミックが搭載されており、これを調整することで、

光の照射角度や範囲を変えることができるようだ。


「ニャンタ、空き瓶ちょうだい!

 妖精見つけたら捕まえるんだ」


「先輩、瓶に詰めたら

 息ができなくなるっす

 生き物見つけても捕まえちゃダメっすよ」


「ほら空き瓶だ、

 欲しいならいくつか持っていけ」


先輩は楽しそうにバッグに空き瓶を詰めていた。

コルクで蓋をしたら、生き物は窒息死するっす

これだからゲーム脳は困るっすよ


「炊飯器!念のために

 お前は薬草エキスが入った瓶を持っておけ」


「古墳の中って、

 私が怪我するかもしれないくらい

 危険なんすか…?」


私は少し不安になりながら、

地面に置かれたアイテムを、

ひとつずつバッグに詰め込んだ。


カンテラは明かりを灯すアイテムで、

明るさの範囲を調整できるみたいだ。


「回復アイテムは

 塗るなり、飲むなり、投げるなり用途は様々だろ

 使い道がなければ身近な奴にでも使ってやれ!」


ニャンタの説明を聞きながら、

私は少し考え込んでいた。


ここには私たち以外誰もいないのに、

遺跡の中で誰に回復アイテムを

使えと言うんだろう?


少し疑問を抱きながらも、

薬草エキスの瓶を二つ手に取った。


「ニャンタ!

 ツルハシの準備はオッケーだよ」

「よし、じゃあ突入するぞ」


私たちはテントから出て、

古墳の入り口に向かって歩き始めた。


先輩は入り口の前に立つと、

大きく息を吸い込み始めた。

いったい何をするつもりなんっすかね?


「ごめんください!

 誰か住んでますかぁ!

 いないなら勝手に入りますよ!」


「先輩、何やってんすか

 私たちがココにいるのがばれるっすよ」


先輩の声は古墳の中に響き渡っていた。

声の反響が何度も古墳の中を巡り、

静寂を引き裂いていった。


一方、その頃、古墳の地下一階では…


「主さま、なにやら外が騒がしいです。」


「この拠点は結界で覆っていたはずだけど?

 どうやって侵入したのかしら?」


先輩の声は案の定、

骨将軍の親玉にばっちり聞こえていた

ここは古墳の地下一階であった。


彼女の頭は骨でできており、

マジックキャスターのようなローブで身を包んでいる。

そして、長い黄金のスタッフを背負っていた。


従者の男は見た目が人間に見えるが、

肌は青白く、生きているようには見えない。

彼の名前はシャドウグール・ダークサーヴァント


グールと呼ばれる種族で、

心臓は止まっているが意識がある死体である。

腐ることなく活動できる、不死の魔物であった。


身長は2メートルを超える巨漢で、

全身が鋼のような筋肉で覆われていた。


目の中は燃えるような赤い光で輝いており、

歯は鋭く、牙のように尖っていて、

常に歪んだ笑みを浮かべている。


髪は灰色がかった黒色で、長くて乱れている。

風になびくたびに、

まるで蛇が蠢いているかのように見える。


全身には暗黒色の重厚な鎧、

右手には巨大な戦斧を持っており、

その刃は赤黒い光を放っていた。


彼は見た目からして異常な強さを持っており、

ただのアンデッドとは一線を画する存在だ。


「それになんでしょうあの声は

 これから侵入しますって

 馬鹿正直に言ってききましたね」


「結界を破るほどの実力者なら

 魔人がやってきたのかしら?

 まだ魔王が誕生すらしてないのにおかしいわね」


しかし、彼女は、慌てる様子もなく落ち着いていた。

まるで侵入者が来ることを、

最初から予期していたかのような態度だった。


「まあ、仮に魔人が来ようとも、

 私たちは万全の準備ができている。


 この遺跡の素材はアダマン鉱石を

 ブレンドした最上級の硬さだ


 その上、物理攻撃を無効にする

 魔術を何重にもかけている。


 上の三階層には大量のデストラップと、

 私が作り出した高レベルのダークレイスや

 ファントムゴーレムを配置した。


 そして空間を歪ませて、

 見た目以上に巨大な迷路にしている。

 たとえ魔人でも突破は不可能だろう。


 ここまで来れるものなら来て見…」


ドカァァァン


彼女が言い終わる前に、

突然、巨大な爆発音が地下全体に轟いた。

古墳の壁や天井が震え、その音は凄まじかった。


「これは一体なんの音!?」

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