第21話 スケルトン軍団の襲来!先輩とコテージ防衛戦 part9

骨将軍はアルミスの腕に

自分の剣が弾かれた瞬間、

その硬さと威力に驚き、困惑した。


しかし、さきほどの一撃を通じて、

彼はある事実に気づいた。


もし、我が主が理想とする一撃であったならば、

この剣は粉々に砕け散っているはずだ…。

それなのに、思ったよりも衝撃が弱いな…?


彼の鋭い目が、

目の前に立つ金髪の少女の未熟さを見抜いた。

ここから導き出される結論は、ただ一つ。


「なるほど、お前、

 その力をまだ完全には

 使いこなせていないな?」


彼は一瞬考え込む。

目の前の少女は、

紛れもなく天才だ。


今はまだ未熟だが、

もし成長を続ければ、

いずれとてつもない魔術師になるだろう。


しかし、現時点では未完成。

これならば、今のうちに倒して主に差し出せば、

その忠義を讃えられるはずだ――。


「その腕を維持するのに、

 相当な魔力を消費しているだろう?」


冷ややかな笑みを浮かべながら、

骨将軍は私に向かって、

鋭い声で告げる。


「どれほど持ちこたえられるか、

 試させてもらうぞ……」


(いや、私じゃなくて

プルルが腕を操ってるんすけど!?)


その言葉とともに、

空気が一瞬にして張り詰め、

場の雰囲気が変わった。


肌を刺すような、

不穏な気配が辺り一帯を包み込み、

私は全身に冷や汗が流れるのを感じた。


目の前に立つこの存在が、

何か恐ろしい攻撃を仕掛けてくる…

そんな予感が全身を覆い尽くした。


「なんか嫌な予感がするっす」


背後でプルルは、

私にしっかりと張り付きながら透明になり、

真剣な表情で骨将軍を見つめている。


相手との距離は数メートル。

攻撃が来れば、

すぐに対応できるよう備えていた。


骨将軍は剣をしっかりと握り直し、

鋭い目で相手を見据えながら、

ゆっくりと狙いを定めた。


動きが一瞬止まったその刹那、

彼はスキルを発動。


「行くぞ…

 ネクロ・シンドローム!」


その言葉とともに、

剣が音速を超える勢いで閃く。

瞬く間に、無数の斬撃を繰り出した。


このスキルは、

使い手の実力に応じて、

高速の連撃を繰り出すものだ。


彼はわずか1秒の間に

3連撃を叩き込むことが可能だった。

斬撃の嵐が、後輩ちゃんを追い詰めていく—。


「プラァラァラァラァラァ!」

「ぎゃぁぁぁ」


斬撃が繰り出されるたび、

空気を切り裂く鋭い音が響き、

容赦なく後輩ちゃんに襲いかかる。


だが、プルルも負けていなかった。

両腕を交互に繰り出し、

目の前の一撃一撃に対応する。


その高速で繰り広げられる応酬に、

私はただ立ち尽くし、

茫然とするしかなかった。


目の前で繰り広げられる、

斬撃と防御のぶつかり合いは、

火花の舞う壮絶な光景となっている。


私は恐怖と混乱に包まれ、

声を上げずにはいられなかった。


「やばいっす

 目の前で火花だけが散りまくってるっすぅ!

 まじでこれやばいっす」


「プッププー

 (この程度の攻撃ならへっちゃらだ)」


プルルは透明になったまま、

私のローブにしっかりと張り付いている。


骨将軍はどうやら、

私がこの不可思議な腕を出現させていると、

勘違いしているらしい。


そして、彼は私に向かって、

冷ややかな笑みを浮かべながら、

話しかけてきた。


「ほう?驚いて叫びながらも、

 俺の攻撃に対応するとはな…」


何だこいつ?

明らかにビビっているのに、

俺の攻撃を全て防ぎきってやがる…。


骨将軍は、金髪の狼狽ぶりを嘲笑していたが、

それと同時に自分の攻撃がことごとく

防がれていることに驚愕していた。


「ほうこれに耐えるか

 なら本気を出すとしよう

 スキル【ブースト】」


ボーンジェネラルの声と共に、

その身体が一瞬、

黄色いオーラに包まれた。


この【ブースト】は、

身体能力を劇的に向上させるスキルであり、

接近戦で戦闘力を最大限に引き出すものだ。


Aランクの冒険者でさえ、

一握りの者しか習得していないこのスキルは、

彼にとって基本中の基本だ。


そして、ブーストには、

さらにその先が存在していた。

ダメ押しとばかりにそれを発動。


「【超ブースト】!」


次の瞬間、骨将軍の身体は

オレンジ色のオーラに包まれた。


この【超ブースト】とは、

ブーストをさらに強化し、

身体能力を極限まで引き上げる能力だ。


彼がこれを発動させたことで、

この戦いが単なる狩りではなく、

命を懸けた決闘だと認識されたことを意味していた。


それは後輩ちゃんにとっては、

いい迷惑であった。


「プッププ

 (なにあれ、雰囲気が変わった)」


「後輩ちゃん!

 骨将軍の全身が一瞬光ったよ」


「見てたっす!

 あれは一体なんすかぁ!? 」


「今のは、能力向上のスキルだ。

 今までとは次元が違う攻撃が来るぞ!」


スキル【ネクロ・シンドローム】を再び発動

鋭い声で叫びながら、

彼はその剣を一気に振り抜いた。


今度は、毎秒10連撃の斬撃の嵐が迫る。


連続で繰り出される斬撃は、

先ほどの比ではなく、

さらに重く、さらに速くなっていた。


プルルは必死に両腕を振りかざし、

次々に襲いかかる攻撃をなんとか凌いでいたが、

その表情には焦りが浮かんでいた。


「プププ(ダメだ攻撃が捌ききれないよぉ)」


プルルが苦しげに呟く中、

骨将軍は攻撃を浴びせながら、

突然静かに呟いた。


「adapted(アダプテッド)

 お前の攻撃にはもう適応した」


こいつの攻撃の射程は1.5メートル。


身体能力を限界まで高めた俺の攻撃を、

辛うじて捌いているが、

もう限界が見え始めてるだろ?


プルルの動きが徐々に鈍くなり、

彼の剣を弾く力が落ちてきていることに気づいた

骨将軍は、冷酷に続けた。


「近接戦闘の経験が乏しいのだろう?

 お前のパターンは完全に見切った

 ほら頑張って耐えてみろ」


プルルは明らかに苦しんでいた。

ブーストで身体能力を強化した連撃は、

通常の攻撃とは桁違いの威力を持っていた。


「プププ…(もう、これ以上は…無理だ…)」


その時、私は目の前で繰り広げられる高速の攻防を

まったく目で追えず、

何が起きているのか理解できなかった。


戦況が優勢なのか劣勢なのかわからず、

考えるだけ無駄だと悟った私は、

ただ棒立ちすることしかできなかったのだ。


だから、後輩ちゃんは

考えるのを止めてしまったのである。

それは驚きの表情が消えることを意味していた。


骨将軍は、敵が息切れして力尽きそうな様子を見て、

これならすぐに片が付くと楽観的に構えていた。

しかし、次第に胸の中に疑問が湧き上がってきた。


彼の攻撃には迷いが生じ、

速度と威力がわずかに落ち始めていた。


「ププ(あれ?攻撃が軽くなった)」


相手をよく観察していると、

金髪は全く焦っておらず、

余裕すら感じさせる態度だった。


自分が優勢のはずなのに、

相手は汗一つかいていないことに動揺を覚えた。


こんなスピードで攻撃を交わしているのに、

俺はスケルトンだからスタミナは無限だが…

こいつは人間だ、限界があるはずだ。


それに、この異常な腕を生成し動かすには、

莫大なエネルギーが必要なはず。

まさか、こいつの魔力は無限だというのか…?


ボーンジェネラルの不安はさらに深まった。


特に、金髪が仲間とこちらに目もくれず、

よそ見しながら楽しげに話し始めたことで、

その不安は一層強まる。


(こいつ死が恐ろしくないのか!?)


「先輩、この骸骨がさっきから

 派手なポーズを決めてるっすけど、

 何をしてるのか見えるっすか?」


「後輩ちゃんを叩き斬ろうと、

 ブンブン剣を振り回してるよ。」


あっやっぱり攻撃されてたんすね

全然分からなかったっす


「ねぇニャンタ

 私も加勢したほうがいいかな?

 いまみんなで襲えばタコ殴りにできるよね」


「だめだ、行くな!

 プルルの経験値にならねぇだろうが」


プルルが成長してくれるのは嬉しいっすけど

私の安全性を第一に考えてほしいっす

あと目の前の火花の量が半端ないんっすけど


私は、もうタイマンではなく、

ゲームのようにみんなでボスを集団で

叩くべきだと考えていたが、


ニャンタは戦闘に加わる気など、

微塵もなさそうで、

諦めるしかなかった。


まあ実際にはタイマンではなく、

正確には二対一の戦いである。


プルルはまるで後輩ちゃんという馬に乗った

騎士のように、見事な魔力操作を駆使し、

骨将軍と渡り合っていた。


「まるでこいつの意思とは関係なく

 両腕が動いているようだ。

 どういうことだ?」


骨将軍は本気を出せば勝てると考えていた。

しかし、戦況は彼の思い通りにならず、

苛立ちが募るばかりだった。


彼の攻撃は次第に勢いを失い、

恐怖と焦りが彼の心を蝕んでいく。


相手の連撃が続くなか、プルルは冷静に、

そして着実にその攻撃を捌き続けていた。


「ニャンタ見てみて

 スティール・ウォーカーの手の形をbにして

 マグマに漬けるとかっよく溶けていくよお」


「マグマで溶けても帰ってくるぞってか?

 クルミお前はわかってねぇな

 あれは帰ってこないからカッコいいんだぜ」


「お前らスケルトンで遊んでんじゃねぇ」


まさか、目の前でスケルトンの

処刑ショーを見せつけられるとはな。


生命がないものには、

人権もないってことか?

くそ、こんなことに気を取られている場合じゃない。


「ニャンタさん、

 私って動かないほうがいいんっすかね?」


「動くなら後ろ向きに歩け

 後ろを向いたら容赦なく刺されるぞ」


「おい、よそ見してんじゃねぇぞ」


この金髪の少女、

こちらを見ずに攻撃をさばいているだと?

俺の斬撃を見切りつつあるとでもいうのか…?


その動揺が隠しきれず、

力任せに振り回していた剣を、

無意識に小技へと切り替えてしまった。


戦士同士の戦いには、能力だけでなく、

こういった駆け引きが重要だ。

フェイントもまた戦略の一つだ。


攻撃すると見せかけて、相手を惑わせ、

隙をついた瞬間に斬撃を繰り出す…。

それが俺の計画だった。


だが、フェイントをかけた瞬間、

まるで俺の意図を見抜いていたかのように、

すぐに後ろ歩きで後退を始めた。


「な、何なんだ、こいつ…」


フェイントを仕掛けた結果、

いったん距離を取られて、

体勢を立て直されたのである。


「ちっ、まあいい、

 次で確実に葬ってやる」


だがこの金髪の少女を、攻撃するたびに、

彼女の冷静さと確信に満ちた動きと表情が

俺の焦りを一層増大させていた。


なぜ後輩ちゃんはフェイントを見抜けたのか?

その答えは意外にも、

ただ恐怖に突き動かされていただけだった。


迫り来る斬撃の嵐に圧倒され、

彼女は逃げ出そうと、

タイミングを見計らっていた。


骨将軍がフェイントで、

一瞬の硬直を見せたその隙を逃さず、

ようやく距離を取ることができたのだった。


「火花が火花が止んだっすぅ!」

「炊飯器、よく見て引いたな

 タイミングはバッチリだったぜ」


一方のプルルにとっても、

それはまさに命拾いだった。


すでに限界を超えており、

あのまま連撃が続いていたら、

間違いなく耐えきれなかっただろう。


そして、フェイントに引っかかって

致命的な一撃を食らっていたかもしれない。


まさか相手が攻撃するかのように見せかけて、

実際には攻撃しないという

小技を使うとは思いもしなかった。


プルルは、戦闘において

まだまだ経験が浅い自分に気づいた。

戦いにはこんなにも巧妙な駆け引きが必要なのだと。


戦闘とは、ただ力をぶつけ合うだけではなく、

相手の心理を読み、技術を駆使する

奥深いものなのだと経験をつめたのだ。


「後輩ちゃん

 すごい攻防だったね」


「ボーンジェネラルも様子見してるっすね

 なんとか一休みできそうっす」


ボーンジェネラルという魔物にも、

それぞれ独自の個性があり、

戦闘スタイルも異なる。


彼は特に用心深い性格で、

その慎重さは生前の戦場での経験から、

培われたものだった。


暁の幻影団と対峙した際も、

まずはスケルトンを前線に送り込んで、

相手の力量を探った。


敵が強いと判断すれば、

無駄にリスクを冒すことなく撤退する。

勝算が見えたときのみ全力で殲滅にかかるのだ。


後輩ちゃんを狙ったときも、

いきなり全力で襲いかかることはせず、

まずは彼女の反応を観察して次の一手を考えた。


しかし、その慎重さが仇となり、

結果的にプルルに接近戦の技術を

磨く時間を与えてしまったのである。


「ププ(このままじゃダメだ)」


プルルは今の戦闘で、自分の力が

不足していることを痛感していた。

だからこそ、必死に考えていた。


連撃の嵐は確かに凄まじいが、

よく考えれば腕が増えているわけでもなければ、

全ての攻撃が同時に来るわけでもない。


ただ、順番に一撃ずつ、

繰り出されているに過ぎないのだ。


ならば、初撃をパリイして体勢を崩すか、

あるいはもっと強力な一撃を叩き込めば…


そう考えている時、

後輩ちゃんが作り出した硬直状態の中で、

あるひらめきが訪れた。


「ププップププ

 (なぜ、これまでの方法に

 こだわってたんだろう…?)」


その疑問は新しい戦術への突破口となった。

即席のアイデアではあるが、

やってみる価値はある。


賭けに出るしかないとプルルは決断した。


今、両者は距離を取り合い、

次の一手を見定めている。


骨将軍は次の攻撃をどう繰り出すか、

プルルは新たに閃いた必殺の一撃をどう放つか、

それぞれが、その瞬間を待っていた。


「プププッププ

 (一度技を見られたら対策される)

 (次で決めるしかない…!)」


プルルは心の中で決意を固め、

目の前の敵に対峙した。


次の一撃で、勝敗が決まるだろう。


両者の間に張り詰めた空気が、

次の瞬間の激突を予感させた。

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