第18話 スケルトン軍団の襲来!先輩とコテージ防衛戦 part6

「これで全力か?失望したよ。

 俺たちには到底及ばない、

 雑魚どもだったか」


ボーンジェネラルが不敵な笑みを浮かべながら言葉を発した。

その瞬間、カインたちは驚愕した。

スケルトンが言葉を話せるとは思ってもみなかったからだ。


さらに残りの3体が一斉に高笑いを上げ、

その声はコテージの周辺全体に不気味に響き渡った。


まるで彼らがこれから繰り広げるのは、

単なる戦いではなく、

弱者を弄ぶ狩りの時間だと宣言しているかのようだった。


その笑い声には冷酷さと残虐さが滲み出ており、

彼らがどれだけ暁の幻影団を

軽視しているかが伝わってきた。


ボーンジェネラルがゆっくりと腕を上げると、

笑い声はピタリと止まり、

彼は手で何かの指示を出すような動きを見せた。


ジェネラルの後ろに守られていたメイジが

暗黒の杖を取り出し、呪文を唱え始めた。


呪文の声が低く響くと、地面が不気味に震え始め、

白い骨のスケルトンが3体と鋼鉄のスティール・ウォーカー1体が

地面から腕を突き出し、次々と現れた。


これまで戦っていたスケルトンは、

すべてこのメイジの魔法によって作り出された存在だったのだ。

暁の幻影団のメンバーはその事実を知り、焦りを隠せなかった。


カインは一つの疑問を抱えていた。


「なぜ俺たちが暗殺したボーンメイジは

 一度も魔術を唱えなかったんだ?」


これまでのメイジたちは、

魔法を使わないどころか、

まるで囮のように配置されていた。


その答えは、目の前にいるジェネラルに守られたメイジにあった。

実際に魔術を使える本物のメイジは、

このジェネラルに護衛されながら背後で控えていたのだ。


亡骸をよく見ると、倒したボーン・メイジの正体は、

ただのスケルトンが魔法使いの杖とローブを

身にまとっていただけだった。


「俺たちが本当に倒すべき相手は、

 スケルトンの軍団じゃなくて、

 残ったこの4体だったみたいだな」


「カイン、やべぇぞ

 どうすんだよぉ」


ジェネラル・ボーンは、

ただのスケルトンの指揮官とは

一線を画していた。


相手の手の内を探り、

そのすべてを暴き出したうえで確実に

葬り去るという冷徹な戦術を使ったのだ。


彼は、使い捨てのスケルトンを前線に送り込み、

暁の幻影団のメンバーがどのように対応するかを

じっくり観察していた。


「ここまで用心深いスケルトンなんて見たことがない」


スケルトンはただの使い捨ての兵士に過ぎない、

普通は彼らは死んでいるので、

死ぬことを恐れずに特攻してくるだけのはずだった。


だがボーンジェネラルは計画を練り、

暁の幻影団のメンバーの能力を探った。

これは常識では考えられない異常な行動なのだ。


カインは仲間たちを見渡しながら、次の一手を考えた。

このままでは、ジェネラルとその背後にいる本物のメイジ、

透明なアーチャー達によって追い詰められることは明白だった。


この状況をどうにかして打破しなければならない。

さもなければ、全員が命を落とす危険に晒される。


「コテージの前方に陣をとっても

 すぐに襲ってこなかったのは

 スケルトンを召喚して数を増やすためだったのね」


「あのメイジ、ただのスケルトンじゃないわ、

 地面からアンデットを召喚するなんて異常よ!」


「今からでも遅くない

 鑑定のスクロール2つを使って

 メイジとアーチャーを確認してくれ」


「了解!鑑定します」


ライラは残り二つしかない

鑑定のスクロールを手に取り、

貴重なアイテムを惜しみなく発動させた。


この戦いの行方を左右する重要な情報を得るためには、

鑑定が必要不可欠だったからだ。


ライラはスクロールを掲げ、

声に出してモンスターの詳細を読み上げた。


アニメイト・ネクロキャスター


ステータス

レベル: 70/99

HP: 3,000

MP: 22,000

攻撃力: 500

防御力: 200

魔力: 5,200


状態異常耐性

毒: 無効

睡眠: 無効

麻痺: 無効

即死: 無効

呪い: 無効


属性耐性

火: 弱点 (40% 増加)

水: 50% 耐性

風: 30% 耐性

土: 40% 耐性

氷: 60% 耐性

光: 弱点 (40% 増加)

闇: 無効


スキル シャドウリザレクション

    ネクロマントラ

    スペクトラルシールド

    ソウルリーパー


アルカミスリル・ツインズ・デッドアイ


ステータス

レベル: 60

HP: 4,000

MP: 8,000

攻撃力: 5,500

防御力: 1,800

魔力: 1,200


状態異常耐性

毒: 無効

睡眠: 無効

麻痺: 無効

即死: 無効

呪い: 無効


属性耐性

火: 弱点 (40% 増加)

水: 40% 耐性

風: 40% 耐性

土: 20% 耐性

氷: 50% 耐性

光: 弱点 (40% 増加)

闇: 60% 耐性


スキル クインタプルスナイプ(5連射撃)

    フォーカスサイト

    ダークオーラ

    ウィンドダッシュ


「モンスターの正体は…

 デッドアイとネクロキャスター!

 しかもどっちもネームドモンスターよ


 デッドアイの攻撃力はヒュドラ並みに高いわ

 でも両方、HPと防御は低いから、

 攻撃を一度でも直撃させれば倒せるかもしれない」


この鑑定結果を聞いて、暁の幻影団のメンバーたちは瞬時に理解した。

相手はただのスケルトンではなく、

高い戦闘力を持つ強敵であることが明らかになったのだ。


アルカミスリル・ツインズ・デッドアイは、透明化を解除した。

この人間相手なら勝てると確信したからだ。

彼らは暁の幻影団を完全になめ腐っていた。


通常のデッドアイとは異なり、その片腕は、

異世界特有の鉱石「アルカミスリルダイト」で作られていた。

軽量でありながら驚異的な頑丈さを誇っている。


通常の金属を遥かに凌ぐ特性を持つ

この鉱石で作られたアームは、美しい銀白色の輝きを放ち、

その光沢は見る者に圧倒的な威圧感を与えた。


そして、この腕はただの装飾品ではなく、

デッドアイの射撃の威力を飛躍的に向上させていた。

弓を引く力が倍増し、放たれる矢の速度と貫通力は劇的に高まるのだ。


「後輩ちゃん!

 アーチャーが姿を現したよ!

 なんか雲行きが怪しくなってきたね」


「プーププーププー(あの腕ほしい!)」


「おい、炊飯器!

 プルルがあのプラチナみたいに輝く

 スケルトンの腕を欲しがってるぞ?」


「プルル、腕をどうするつもりなんすか?

 食べたって美味しくないっすよ?」


私は困惑しながらも

プルルの気持ちを理解しようとしていたが、

なんで欲しがるのか分からなかった。


「でも、あの腕、なんか光ってるし、

 プルルの好奇心が騒ぐのは分からなくもないっす」

「プーププープー(使い道はこれから考える!)」


外では激しい戦闘が繰り広げられていたが、

コテージの中はまるで別世界のように平和で、

戦いの緊張感が嘘のように感じられた。


ネクロキャスターは、自分が鑑定されたことを感じ取ると、

黒い霧を体にまとわせ、本来の姿を露わにした。

それまでわざとメイジを装っていたのだが、その偽りを脱ぎ捨てた。


ネクロキャスターの姿は、

古びたローブや魔法のシンボルが描かれた

装飾品に包まれていた。


そのローブは長く、所々が擦り切れていて、

まるで何世代にもわたって使われ続けたかのような

古めかしい雰囲気を醸し出していた。


彼の頭蓋骨には、冠や頭飾りがつけられており、

それらは単なる装飾品ではなく、

魔力を増幅するためのマジックアイテムに違いない。


さらに、ネクロキャスターが手にしていた魔法の杖は、

古びた木や骨で作られており、

その先端には不気味に輝くクリスタルが嵌め込まれていた。


カインはその姿を目の当たりにし、内心で悔しさを噛み締めた。

最初から鑑定のスクロールを使って確認していれば、

事前にこの恐ろしい存在に気づくことができたかもしれない。


だが、ボーンジェネラルの用意周到さは尋常ではなかった。

彼はネクロキャスターをただのメイジに偽装させ、

鑑定のスクロールを使わせないように仕向けたのだ。


「3体のボーンメイジに鑑定のスクロールを使うのは

 無駄だと思わせられてたんだ、

 俺たちはまんまと嵌められたってわけだ」


「鑑定されたくないからって

 普通そこまでするか?

 人間でもそこまで慎重じゃねぇぞ」


しかし、出し惜しみした結果、

彼らは今、窮地に立たされている。


その一方で、復活したスケルトンたちは、

散らばっていた弓と矢を拾い上げ、

再び攻撃を開始してきた。


復活するスケルトンの数は4体、

そして3分ごとに新たな4体が蘇り続けるという

絶え間ない復活の連鎖が、カインたちの士気をじわじわと削っていく。

持久戦になればなるほど不利になる

これは絶え間ない攻撃を意味し、

暁の幻影団にとって大きな脅威となっていた。


「ライラとエリスのMPも無限ではない…」


カインは冷静に分析しながら、心の中で焦りを感じていた。

今さっきの激しい戦闘で、

彼女たちの魔力はかなり消耗しているはずだ。


持久戦に持ち込まれば全滅する、

できるだけ早く勝負をつけなければならない。

短期決戦で決着をつけるしかない。


カインは再びナイトヴェールを使い、

リアと共に透明化して敵との距離を取った。

彼らは息を潜めながら態勢を整え、次の攻撃に備えていた。


一方、レオは次々と襲いかかる

スケルトンたちを迎え撃ち、

彼の大剣で次々と切り伏せていく。


だが、ついにアーチャー2体が動き始めた。

彼らはスキル【クインタプルスナイプ】を連続で発動し、

5連射の矢をレオに向かって何度も放ってきた。


「うおぉぉぉ」


左右前方からの乱れ撃ちによる矢の雨が、レオに降り注ぐ。

レオは大剣を振り回して矢を振り払おうとするが、

その数と速さには限界があった。


「このままでは…」


カインが緊張した表情でレオを見つめていたその時、

突然レオの前方に炎の壁、

【ファイアーウォール】が立ち上がった。


ライラが、レオがこの矢の嵐をさばききれないと判断し、

炎の壁を出現させて彼を守ったのだ。

炎の壁は視界を遮り、矢の多くはその中で焼かれて消えた。


しかし、アーチャーの一体はそのまま退かず、

スキル【フォーカスサイト】を発動した。


次の一撃にすべての力を注ぎ込み、

自身の命中率と会心率を劇的に向上させるスキルだ。


そして、その一撃には、ドラゴンの鱗をも貫く威力を持つ

特製のドラゴナイト製の矢尻が使われていた。

ミスリルダイトの腕で弓の弦を限界まで引き絞り、その矢を放った。


【ファイアーウォール】によって視界が遮られていたレオは、

その矢が飛んできたことに気づかなかった。


矢は炎の壁をものともせずに貫通し、

レオに直撃した。

その瞬間、鋭い痛みが襲った。


「ぎゃああ

 膝に、ひざに矢を受けてしまったぁ」


「嘘でしょ!あれだけ高温の壁なのに、

 矢が貫通するなんてありえないわ…」


炎の壁が消えると同時に、

スティール・ウォーカーがレオに向かって襲い掛かる。


相手の全身は強固な金属で構成されており

鋼鉄の骨格がむき出しになっている

その姿はまるで鋼鉄の怪物のようで、恐ろしい威圧感を放っていた。


まだ復活したばかりのため、

さっきのように大型の剣やハンマーを持っていなかった。

だが、素手の一撃だけでも致命傷を負わせるほどの破壊力を持っている。


「くそっ、こんなところで

 やられるわけにはいかない…!」


レオは拳を握りしめ、

必死に痛みをこらえて立ち上がろうとしたが、

膝に走る激痛が彼を阻んだ。


危険だと判断したライラは【ファイアランス】を唱えた

だが、魔力が枯渇して、

急激な眠気に襲われ倒れてしまった。


「ライラさんが倒れったっす

 このままじゃ、やられるっすよ!」

「後輩ちゃん、ライラさんを回収しにいこう」


私と先輩は、危険を承知で

コテージから飛び出した。

ライラさんを見捨てるわけにはいかなかったからだ。


一方、カインは素早くレオのもとに駆け寄り、

彼に【ナイトヴェール】をかけた。

透明化することで、レオが矢に狙われる心配はなくなった。


「カイン頼みがある、俺を囮にして、

 ネクロキャスターを叩け」

「そんなことできるか、安全な場所まで、」


そう言いかけた瞬間、

カインは状況の深刻さを痛感した。

このままでは、全員がやられてしまう。


レオを囮にしてでも、

ネクロキャスターを倒すしかないという結論に至った。

それは、パーティーのリーダーとして、苦渋の選択だった。


エリスは弓を手に、何度もネクロキャスターを狙おうと考えたが、

位置が絶妙に遠く、魔法の矢を使用しても

威力が十分に発揮されないギリギリの距離に陣取っていた。


仮に矢が当たったとしても、

致命傷にはならないだろう。


ネクロキャスターがスケルトンを召喚している間は、

攻撃魔術を使ってこないはずだ。

エリスは今が唯一のチャンスだと感じた。


「今のうちに…なんとかしなきゃ!」


だが、焦りつつも、復活した白いスケルトンたちが

次々と前進してくる中、エリスはその場に立ち止まることなく、

魔法の矢で彼らを次々に貫いて倒していくしかなかった。


しかし、エリスがスケルトンを狙っているその隙をついて、

デッドアイが素早くエリスに向かって矢を放った。

その一撃を避けきれず上腕の皮膚が削れた。


幸いにも致命的な箇所には当たらなかった。

しかし、鋭い痛みが彼女を襲った。


矢尻には黒い液体が塗られており、

それが毒であることはすぐにわかった。

彼女は瞬く間に意識を失い、その場に崩れ落ちた。


「カイン、エリスがやられたわ

 あの子たちがコテージに運んでくれるみたい」


「くそったれぇ

 リア、あいつらを囮にしてでも

 ネクロキャスターを倒すぞ」


カインは苦渋の選択を迫られながらも、

冷静に指示を出した。


レオを透明化したままその場に寝かせつつ、

正面にいるネクロキャスターを鋭く見据えた。

彼の心には迷いはなかった。


仲間を救うために、そしてこの戦いに勝つために、

カインは最善の手を打つ決意を固めたのだ。


「エリスさんも倒れたっす」

「二人をコテージに連れていこう

 フック直行便でいくぞぉ」


先輩は無理やりエリスとライラを背中から掴み、肩に固定すると、

彼女たちを安全な場所へ連れていくために、

コテージに向かって走り出そうとした。


しかし、その瞬間、2体のデッドアイが私たちを標的にし、

トドメを刺すかのように恐ろしい速度で

【クインタプルスナイプ】を連続発動させた。


デッドアイたちは狩りを楽しむような

冷酷な笑みを浮かべながら、

次々と矢を放ってきた。


その矢の速度は凄まじく、

あっという間に空中を埋め尽くし、

放たれた矢の数は50本を軽く超えていた。


「ぎゃぁぁ!

 大量の矢が飛んできたっすぅ」

「ライラさん達に刺さっちゃうよぉぉ」


絶望的な状況に追い込まれていた。

私や、負傷者を背負っている先輩は、

完全に絶好の的にされてしまっていたのだ。


デッドアイたちはまるで獲物を追い詰めるかのように、

楽しみながら矢を放ち続けていた。


矢はもう目の前まで迫ってきており、

この高速の矢の雨を避けることなど、

到底不可能だと感じた。


反射的に手を前にかざして防御の姿勢をとった。

矢の雨から必死に身を守ろうとしたが、

現実には何もできない自分がいるだけだった。



1秒、2秒・・・5秒が経過しようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る