第17話 スケルトン軍団の襲来!先輩とコテージ防衛戦 part5

ニャンタは全滅する可能性について、

さらなる説明を続けた。


「簡単に言えば、黄金の鎧がタンク役だ。

 攻撃するのはのはアーチャー。

 こいつらを先に倒さないと面倒だぜ」


私は周囲を注意深く観察したが、

先輩が言う、変な弓を持つ敵は、

どこにも見当たらなかった。


「え、弓兵なんて

 どこにもいないっすよ?

 まさか、透明化してるとかっすか?」


「正解だ、骨将軍の位置から

 左右に分かれて数十メートル

 離れた場所で待機してるぜ」


透明な敵が見えないままでは、

いつ攻撃されてもおかしくない。

何も見えないことが私の不安を募らせた。


「カ、カインさんに

 知らせに行くっす!」


「おいおい炊飯器!最後まで話を聞けって。

 お前らが見たっていうメイジの話だが

 ――あ、行っちまったか」


私は一目散に、

暁の幻影団のもとへ駆けだした。

今は彼らに状況を伝える方が優先だ。


私が彼らのもとへ行くと

どうやら戦闘の準備をしているようだ。

カインとリアはスケルトンの軍団を見つめていた。


「先輩が言ってた弓を持ってる敵、

 カインさんみたく透明らしいんすけど

 見えない相手、平気っすか?」


息を切らしながら尋ねると、

カインたちの顔には、

決意と緊張が浮かんでいた。


「心配するな。問題ない。」


透明な敵との戦いは、常に予測不能だ。

どれだけ準備を整えていようと、

見えない相手の恐怖は消せない。


その恐怖が、油断を生み、隙を作るのだ。

見えない刃の一撃が命を奪う――

それが透明な敵の恐ろしさだ。


「リアは風魔術が得意でね

 相手が透明でも

 位置を掴む方法はあるんだ。」


「風を操れば、空気の流れで

 透明な相手の輪郭を視認できるわ。

 風の奴らの動きを教えてくれるのよ」


「それを聞いて安心したっす」


私は彼らが戦闘準備をする様子を眺めていた。

どうやら前衛と後衛で、

役割を分担しているらしい。


後衛の位置では、

ライラ、エリス、

そしてレオナードが作戦を練っていた。


エリスは精巧な弓を手に取り、

背中に揃えた魔法の矢を確認する。

彼女は弓術と魔術を自在に操るレンジャーだ。


「魔法矢が30本残ってるけど

 スケルトン相手では効果は

 いまひとつなのよね」


「頭蓋骨をぶち抜くか

 腰か脚を壊して機動力を削いで。

 あとは魔術で燃やすわ」


ライラはアンデッドの弱点である

光と炎の魔術を操ることができる魔術士だ。

彼女たちは後方から敵を牽制するつもりだろう。


一方、レオナードは

愛剣の刃を丁寧に研ぎながら、

戦いに備えていた。


「頼むぜ相棒」


数々の戦いを共に乗り越えた、歴戦の相棒だ。

無数の傷が刻まれた刃は、

彼の戦いの歴史を物語っているようだ。


カインとリアは連携の確認を行っていた。

透明な状態で、最適なタイミングを見極め

相手を一撃で仕留める事だ。


全員の緊張感が、嵐の前の静寂を彷彿とさせる。

戦いに向けた準備は抜かりなく、

あとはその時を待つのみ。


カインたちにとって最も厄介な相手は、

魔術を操るボーンメイジだ。


ボーンジェネラルの背後には、

まるで護衛されるかのように、

一体のボーンメイジが控えていた。


「あの位置か……」


カインは歯ぎしりする。

あのメイジを先に潰したいが、

骨将軍が邪魔で近づくことすらできない。


眉をひそめ、視線を鋭く走らせる。

他のメイジと比べ、

あの一体だけが違う雰囲気を纏っている。


他のメイジはみなボロボロのローブをまとい、

ありふれた杖を持っている。

だが、あいつは後方で静かに待機している。


「なんでだ?

 なぜあいつだけが後方にいるんだ?」


その違和感は拭えなかった。

まるで、そのメイジだけが特別な役割を

与えられているように見えたからだ。


「お前たちは危ないから

 家で待機してるんだ、

 矢や魔術に狙われたくないだろ」


「了解っす、

 邪魔にならないよう下がるっす!」

「わかった!」


カインの指示に従い、

私たちはすぐにコテージへと避難し、

窓から戦闘の行方を見守ることにした。


「炊飯器、鳥リスの肉くれぇ

 窓からこいつら観戦するぞ!

 Aランクパーティのお手並み拝見させてもらおうぜ」


やがて、暁の幻影団のメンバーは

あらかじめ定めた位置に配置につき、

各々の武器を握りしめる。


最前線に立ったのはレオ。

後方ではカインとリアが透明化し、

レオの背後に続くように身構えている。


彼らは、スケルトンの集団が、

動かない隙をついて、

先制攻撃で厄介なボーンメイジを暗殺する計画だ。


暁の幻影団のリーダーであるカインは、

全員の位置を確認し終えると、

小声で指示を出した。


「全員、準備完了だな。

 こちらから先手を取るぞ!」


一方、骨の軍勢を指揮する骨将軍は、

カインたちの準備が整ったのを見て、

不敵な笑みを浮かべる。


「ようやく準備完了したか…

 待ちくたびれたぞ。

 スケルトン、突撃開始だ!」


骨将軍はすぐさまスケルトン軍団に、

突撃の合図を送った。


こちらが動き出した瞬間に

敵も一斉に攻撃を開始したのだ。


「弓兵隊、放て!」


しかし骨将軍が相手の準備が終わったとわかると、

待ってましたとばかりに、

笑いながら突撃の号令をだした。


骨の弓兵、スケルトンアーチャーたちが、

一斉に矢を放ち、

空が黒い矢の雨で覆われる。


その間にも、数え切れないほどのスケルトンと、

鋼のスティール・ウォーカーが4体、

次々と突撃してくる。


矢の雨に紛れ、

コテージへと猛然と迫りくる。

彼らの狙いは、後方で待機してる魔術師だ。


無限に思えるほどの矢が、

コテージを目がけて降り注いだが、

ライラは即座に魔術を発動した。


「ファイアーウォール」


矢は火の壁に触れると、

瞬時に燃え尽きて消えていった。


矢の雨が止んだかと思うと、

突撃してきたスケルトン達が、

すでにコテージの近くまで接近していた。


スティール・ウォーカーは弱点である炎の魔法を警戒し、

白い骨のスケルトンを盾として前面に並べるという、

守りを強化した陣形で突っ込んできている。


「こっちはまかせろ」


左方向はレオが大剣を振りかざし、

敵をなぎ倒して対応しているが、

右と正面はがら空きだった。


彼の剣技は見事で、鋼のような体を持つ

スティール・ウォーカーでさえ打ち砕いていった。

その姿はまさに元騎士の実力を物語っていた。


エリスは事前にチャージしておいた

【フロストヴェイル】を発動し、

あたり一面を氷の霜で覆い尽くした。


冷気が空気中に広がり、

周囲の温度が急激に下がる。


「奴らの隊列が乱れたわ!」


通常のスケルトンには効果がなかったが、

鋼鉄でできたスティール・ウォーカーは

冷気で動きが鈍り、取り残されたのだ。


ライラはそのチャンスを見逃さず、

素早く【ファイアランス】の詠唱を始める。


彼女の手元に炎の魔力が集まり、

やがて形を成しながら、

燃え盛る槍へと変わった。


真紅の炎で形成された槍は、

眩しい輝きを放ちながら、

勢いよく放たれた。


炎の槍は鋼鉄の身体を持つ

スティール・ウォーカー3体に突き刺さり、

その凄まじい熱で焼き溶かしていく。


炎の威力に抗うこともできず、

次々と地面に崩れ落ちた。


「よし厄介なやつは

 全部とかしたわよ」


スケルトンがコテージの近くまで接近し、

後衛のライラとエリスに襲いかかろうとしたが、

エリスは冷静に詠唱を始めた。


「ストーン・ウォール

 レオあとはお願い」


彼女の声とともに、

地面から巨大な石壁がせり上がり、

スケルトンたちの進行を阻んだ。


レオナードが後ろから叩きつけて倒していく。

彼の大剣は閃光のように輝き、

鋭い刃がスケルトンの骨を粉々に砕いた


「こいつら弱すぎだぜ」


レオは残りのスケルトンを引きつけ、

笑いながら一掃していた。

大剣を振るう彼の姿は頼もしかった。


一方、カインとリアは

ナイトヴェールの効果で姿を消し、

静かにボーン・メイジの背後へと忍び寄っていた。


「例の透明なスケルトン……

 腕を組んでただ見ているだけなんて、

 何を考えているのかしら?」


リアは戦闘開始の合図と同時に、

一定のリズムで風の魔術を唱え続けていた。


その手から放たれる風は、

まるで見えない渦となって、

透明なアーチャーたちの空気を震わせた。


風が渦巻くたび、

微細な砂や枯れ葉が舞い上がり、

見えなかった敵の輪郭を際立たせていく。


「位置がバレてると

 分かっているはずなのに

 何もしてこないわ」


リアは風の魔術で、

隠れていた敵の位置を暴き出していた。

だが動く気配はまるでない。


アーチャーたちは風の影響で、

姿が一瞬だけ浮かび上がるたび、

じっと観察するだけなのだ。


「動かないなら

 好都合だな」


カインとリアは声を交わさず、

スケルトン・メイジの背後に忍び寄ると、

息を合わせて一気に攻撃を繰り出した。


カインの剣とリアの短剣が閃き、

ボーン・メイジの骨を粉々に砕いた。


彼らは呪文を唱える暇もなく崩れ落ち、

灰となって消滅した。


しかし、攻撃を仕掛けたことで

ナイトヴェールの効果が切れ、

彼らの姿が再び明らかになった。


それがわずか数分のできごとだった。


視界に残っているのは、

ボーンジェネラルとメイジ、

そして透明なアーチャー2体だけだった。


「ねえみんな、

 変な弓を持ったアーチャー、

 何もせずに観戦してるよ!」


「私にも輪郭だけが見えるっす!

 なんかポーズ決めたまま動いてないっすよ

 どんだけ余裕なんすかね?」


スケルトンは上位種でない限り、

単純な命令しかこなせないため、

動きも直線的だ。


カインたちにとって、

スケルトンは型にはめれば、

簡単に倒せる相手であった。


彼らの作戦は非常に精密で、

各自の役割がはっきりと分かれていた。

さすがはAランクパーティの冒険者の連携だ。


「でも、後輩ちゃん!

 30体もいたスケルトン、

 あっという間に残り4体になったよね!」


「本当にすごいっす

 あんなに精密な連携、初めて見たっす

 さすがAランクパーティっすね」


30体いたスケルトンも、今や残り4体となった。

しかし、ここからが正念場というとき、

骨将軍が不気味な笑い声を上げ始めた。


その声は耳をつんざくような不愉快さと、

異様な恐ろしさを帯びていた。


まるで、これから、

恐ろしいことが起こると予告するかのように——。

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