第17話 スケルトン軍団の襲来!先輩とコテージ防衛戦 part5

ニャンタは全滅する可能性について、

さらなる説明を続けた。


「いわば黄金の鎧はタンク役だ。

 率先してダメージを与えにくるのは、アーチャーだ。

 あいつらを先に倒さないと厄介だぜ」


「私にはそいつらが見えないんですけど、

 まさか、また透明になってるんすか」


視線を鋭くし、注意深く観察したが、

先輩の言う、変な弓を持つ敵が見当たらない。

何も見えないことがかえって不安を募らせた。


「正解だ

 カインのナイトヴェールみたいに隠れているぜ

 俺から見たらバレバレだけどな。」


私は焦りを感じ始めた。

透明な敵が見えないままでは、

どこから攻撃が飛んでくるか分からないからだ。


「カインさんに知らせに行くっす」


「炊飯器!最後まで話を聞いていけ

 お前らが見たっていうメイジなんだが、

 ああ、行っちまった」


ニャンタの声が背後から聞こえたが、

私は立ち止まらずにカインの元へ急いだ。


私は焦燥感に駆られながら、

カイン達が戦闘準備を整えているところに駆け寄った。

彼らの準備は万全のようたが、私は不安でいっぱいだ。


「先輩が言ってた弓を持ってるやつ、

 カインさんみたく透明らしいっす

 見えない敵がいるけど、大丈夫っすか?」


息を切らしながら尋ねた。

カイン達の目には決意と緊張が浮かんでいた。


「大丈夫だ。問題ない。」


彼らの戦闘準備がどれほど整っていても、

透明な敵との戦いは常に予測不可能だ。

どれだけ準備を重ねても、見えない敵の恐怖は拭い去れない。


「俺は君の先輩を信じている、

 リアは風魔術が得意なんだ、

 術を発動すれば、相手が透明でも大体の位置は掴めるはずだ」


「それを聞いて安心したっす」


エリスは弓と魔術の両方を使いこなすレンジャーであった。

彼女の手元には精巧な弓があり、

背中には魔法の矢が多数揃っていた。


レオナードはその手に握りしめた剣をしっかりと見つめ、

前線での戦闘に備えていた。


彼の剣は何度も戦場を駆け抜けてきた頼もしい相棒であり、

その刃には無数の傷跡が刻まれていたが、

それは彼の戦いの歴史そのものを物語っていた。


カインとリアはナイトヴェールで周囲に溶け込み、

暗殺技術を駆使して敵の要を狙う計画を実行していた。

あとは最適なタイミングを待ち、致命的な一撃を繰り出すだけだ。


彼らの姿は、まるで嵐の前の静けさのようであり、

これから始まる戦いへの準備は完璧だった。


だが、ボーンジェネラルの背後には、

一体のボーンメイジがまるで護衛されるかのように控えていた。

カインたちにとって最も厄介な敵は、魔術を操るボーンメイジだった。


あのメイジを暗殺しようにも、

あの位置では確実に

ボーンジェネラルに妨害されるだろう。


その状況にカインは苛立ちを覚えた。

気のせいか、そのボーンメイジだけが他のメイジとは

異なる雰囲気を醸し出しているように感じた。


全員が似たような杖を持ち、ボロボロのローブを纏っている中で、

なぜかその一体だけが後方に待機している。

その光景にカインは疑念を抱いた。


「なぜあいつだけが後方にいるんだ?」

カインは心の中で問いかけた。


透明化して奇襲するための準備を整えながら、

その違和感を拭い去ることができなかった。


まるでそのメイジは他のものとは違う、

特別な役割を持っているかのようだったからだ。


「お前たちは危ないから家で待機してるんだ、

 矢や魔法に狙われたくないだろ」


「わかったっす、先輩、お言葉に甘えて下がろうっす

 私たちがいたら作戦の邪魔になるっす」

「わかった!」


「炊飯器、鳥リスの肉くれぇ

 窓からこいつら観戦するぞ

 Aランクパーティのお手並み拝見させてもらおうぜ」


私たちはカインさんの言葉に従い、

コテージの中に退避した。

そして、窓から戦闘の光景を見つめることに決めた。


「よし、戦う準備は整った

 先にしかけるぞ!」


その声を聴いたボーンジェネラルは、

待ってましたとばかりに、

笑いながら突撃の号令をだした。


こちらの準備が完了するのを待っていたのだ、

こちらが動いたと同時にスケルトンの軍団も動き出した。

スケルトンアーチャーが一斉に射撃しはじめる。


そのタイミングでスケルトンと

スティール・ウォーカー4体が突撃してきた。

矢の雨に紛れて接近するつもりだ。


無尽蔵に矢が飛び交うが、

ライラがすかさず【ファイアーウォール】を唱えた。

矢は火の壁に触れると瞬時に燃え尽きて消えていった。


矢の雨が止んだかと思うと、

突撃してきたスケルトン達が、

すでにコテージの近くまで接近していた。


スティール・ウォーカーは弱点である炎の魔法を警戒し、

白い骨のスケルトンを盾として前面に並べるという、

守りを強化した陣形で突っ込んできていた。


左方向はレオが大剣を振りかざし、

敵をなぎ倒して対応しているが、

右と正面はがら空きだった。


彼の剣技は見事で、鋼のような体を持つ

スティール・ウォーカーでさえ打ち砕いていった。

その姿はまさに元騎士の実力を物語っていた。


エリスは事前にチャージしておいた

【フロストヴェイル】を発動し、

あたり一面を氷の霜で覆い尽くした。


冷気が空気中に広がり、

周囲の温度が急激に下がる。


「奴らの隊列が乱れたわ!」


通常のスケルトンには効果がなかったが、

鋼鉄でできたスティール・ウォーカーは

冷気で動きが鈍り、取り残されたのだ。


その隙を見逃さず、ライラは【ファイアランス】を詠唱し始めた。

彼女の手元に炎の力が集まり、次第に形を成していく。

燃え上がる炎の槍が形成され、敵に向かって放たれた。


炎の槍はスティール・ウォーカー3体に命中し、

その強力な熱で瞬く間に鋼鉄の身体を溶かしていった。


スケルトンがコテージの近くまで接近し、

後衛のライラとエリスに襲いかかろうとしたが、

エリスは迅速に【ストーン・ウォール】の魔法を発動


突如として巨大な石壁が地面からせり上がり、

スケルトンたちの行く手を阻んだ。

彼らはその障壁に阻まれ、前進することができなくなった。


レオナードが後ろから叩きつけて倒していく。

彼の大剣は閃光のように輝き、

鋭い刃がスケルトンの骨を粉々に砕いた


レオは残りのスケルトンを引きつけ、一掃していた。

「こいつら弱すぎだぜ」と笑いながら

大剣を振るう彼の姿は頼もしかった。


一方、カインとリアはナイトヴェールで姿を消し、

無音かつ迅速にスケルトン・メイジに近づいた。


リアは開戦と同時に、定期的に風魔術を唱えていた。

彼女の手から放たれる風は、目には見えない

透明のアーチャーの周囲の空気を揺らした。


その風が透明なアーチャーたちの周囲を包み込み、

微細な砂埃や葉がその存在を浮き上がらせ、

隠れていた敵の位置を暴き出す。


「あの子が言ってた透明なスケルトン

 位置がバレてると分かっているはずなのに

 腕を組んだまま、こっちを観察してるだけみたいね」


風が巻き起こるたびに、

透明だったアーチャーたちの輪郭が

一瞬だけ浮かび上がっていたが、動く気配はまるでない。


二人はスケルトン・メイジの背後に回り込むと

一斉に致命的な一撃を放ち、骨を粉々に砕いた。

メイジは呪文を唱える間もなく崩れ去り、その存在は消えた。


しかし、攻撃を仕掛けたことで

ナイトヴェールの効果が切れ、

彼らの姿が再び明らかになった。


それがわずか数分のできごとだった。

視界にはボーンジェネラルと

メイジが残り1体、透明なアーチャー達だけが残っていた。


「ねえみんな、

 変な弓を持ったアーチャー、

 何もせずに観戦してるよ!」


「私にも輪郭だけが見えるっす!

 なんかポーズ決めたまま動いてないっすよ

 どんだけ余裕なんすかね?」


スケルトンは上位種でない限り、単調な命令でしか動けない。

カインたちにとって、スケルトンは

型にはめれば簡単に倒せる相手であった。


彼らの作戦は非常に精密で、

各自の役割がはっきりと分かれていた。

さすがはAランクパーティの冒険者だけのことはある。


彼らの戦略は高度に練り上げられており、

全員が自分の役目を正確に果たしていた。

それはAランクパーティの冒険者ならではの連携だった。


「でも後輩ちゃん!

 あっという間にスケルトン残り4体になったよね!」


「すごいっす、あんなに完璧な連携を見たのは初めてっす。

 やっぱりAランクの冒険者パーティは凄いっすね!」


30体いたスケルトンも、今や残り4体となった。

しかし、ここからが正念場というとき、

ジェネラル・ボーンが不気味な笑い声を上げ始めた。


その声は耳をつんざくような不愉快さと、

異様な恐ろしさを帯びていた。

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