第14話 スケルトン軍団の襲来!先輩とコテージ防衛戦 part2

コテージの外観は、木製で暖かみがあり、

自然に溶け込むようなデザインは、

まるで絵本の中から飛び出したようだ。


「早くコテージに入ろうよぉ」

「私も危険な森じゃなくて

 家の中に入りたいっす!」


先輩がドアノブに手をかけて扉を開ける。

扉が軋む音を立ててゆっくりと開き、

コテージの中の様子が明らかになる。


一歩足を踏み入れると、木の香りが漂ってきた。

壁には暖かみのあるランプが灯され、

柔らかな光が部屋全体を包んでいる。


まるで幼少期におままごとで使っていた

ミニチュアの家をそのまま大きくしたような

温かみと親しみを感じさせた。


入り口からすぐのところに小さなリビングスペースがあり、

木製のテーブルと椅子が配置されている。

そしてテーブルの上には、黒い物体が置かれていた。


「ニャンタ!あれってもしかして!」


「ニャンタさん?

 なんでテーブルの上に

 タイプライターがあるんっすか?」


「コレがあれば、

 魔物がコテージを襲ってくることはないはずだ。

 いわば、お守りみたいなもんだよ」


ゾンビっすか?ゾンビでも襲ってくるんっすか?

タイプライターが魔物を呼び寄せる、

呪物のように見えてきたっすよ?


「なんだ?俺の趣味でタイプライター置いてるだけだが?

 何か問題でもあるのか?ん?

 言いたい事があるなら、言っていいんだゾ?」


「いやなんでもないっす」

「ニャンタこれ打ち込んでみてもいい?」


先輩がキーを押すたびに、音がリズミカルに響く、

小さなハンマーがインクリボンを通して、

紙にインクを打ち付けていた。


「カタカタカタ…」


行の終わりに近づくと「チーン」という音が鳴り、

レバーを引いてキャリッジを元の位置に戻す。

最後の一文字を打ち終えると、満足げに笑みを浮かべた。


「よし、これで完成だ!

[今日は、モモナップルとヒュドラに出会いました。 END]

 セー〇完了したよニャンタ!」


「おお、上手く入力できてるじゃねぇか」

「私はもう何も聞こえないっすぅ!」


私はもう先輩とニャンタさんの

やり取りついては突っ込まないことにした。

まずいっすね、何かで気をそらさなくては!


「あっ、先輩!

 あっちに窓があるっすよ!」

「本当だね、大きな窓だね!」


窓辺にはゆったりとしたソファが置かれており、

その大きな窓からは、

外の風景が一望できるようになっていた。


「ライラとエリスさんは、

 ソファの上に寝かせとくね」


先輩は、一人ずつお姫様だっこして

ソファに運んでいた。


大きな窓から見える星空を背景に、

ソファで穏やかに眠る姿は、

まるで一枚の美しい絵のようだ。


「こっちの部屋には何があるの?」

「そっちはベッドルームだ」


その奥には、二つのベッドが並んでいて、

それぞれに清潔なシーツと

ふかふかの枕が用意されていた。


「個室じゃないんっすね」

「炊飯器!お前は夜、何かに襲われたらどうするつもりだ」

 二人で寝たほうが安全だろうが」


ニャンタさんは肩をすくめながら答えた。

確かに、異世界では何が起こるか分からないっす

何かあった時、すぐに助け合えるほうが安心っすね。


「それもそうっすね

 みんなで集まって寝ようっす」


「ニャンタ!

 他にはどんな部屋があるの?」


あれ?そういえば、私の知ってるコテージって、

お風呂も完備されてるものじゃなかったっけ…

その考えが頭をよぎると、すかさずニャンタに質問してみた。


「あの、ニャンタさん、

 コテージってことはお風呂かシャワーはあるんっすか?

 毒液やら汗やらで、もう限界っす。私、体洗いたいっす!」


「シャワーなら浴びれるぞ?

 だが浄化で体は清潔だから入る必要ないだろ

 俺なんか、半年も風呂に入ってないがキレイだぞ!」


半年もお風呂に入ってないんですか!?

私はニャンタさんがシャワーを浴びることの重要性を

全く理解していないことに呆れていた。


「いやいやいや、問題大ありですよ!

 気持ち的にお風呂に入りたいんっす!」

「ふむ、そういうもんか…」


「そういうもんっす!」


私は力強く必死に訴えた。

清潔であることと、

気持ちがスッキリすることは全く別問題だ。


「奥行って右に風呂場があるぞ」

「先輩、先にシャワー浴びますか?」

「先に入っていいよ!」


その言葉を聞いて、私は晴れやかな顔をして微笑んだ。

熱いシャワーが私を待っていると考えると、

心がウキウキしてきた。


「先輩ありがとうっす

 シャワーがあるなんて、助かるっす!

 じゃあ!プルルは外で待っててほしいっす」


「プププ」


ローブに張り付いているプルルを引きはがそうとした。

プルルはぴったりと私のローブにくっついていて、

なかなか離れてくれなかったが、なんとか先輩の近くにそっと置いた。


「プルルおなか減ってる?

 鳥リスの残りがあるよ」


「プッ(食べる)」

「クルミ、俺にもくれぇ!」


私はシャワーを浴びるつもりだったが、

プルルに裸を見られるのはさすがに気が引けた。


シャワールームには小さな洗面台もあり、

どこかで見たシャンプーや石鹸が整然と並んでいた。

あれ?これ家にるシャンプーと同じじゃないっすか?


私は素早く服を脱ぎ、シャワーを浴び始めた。

湯気がたくさん立ち上がり、

浴室全体が霧のように包まれた。


温かいお湯が肌に触れると、

一瞬で体中の疲れが溶け出すような気がした。

異世界に来て緊張していた筋肉も、徐々にほぐれていく。


「これっす、これが必要だったんっす」


毒液や汗でベタついていた肌は、

お湯で流されていくたびに、

心も軽くなっていくようだった。


シャワーを浴び終えると、

パジャマ用のローブに着替えて

私はフレッシュな気持ちでリビングに戻った。


お風呂から上がった後輩ちゃんは、

湯気が立ち込めるシャワールームから出てきた。


「ありがとうっす、先輩。

 おかげでリフレッシュできたっす」


「それは良かった!

 じゃあ、私もシャワー浴びよっかな」


私がシャワーを浴び終わっても、

ライラとエリスさんは、

ソファでぐっすり眠っていた。


彼女たちの穏やかな寝顔を見ると、

森での野宿がどれだけ過酷だったのか想像できる。


「ライラさん達、

 ずっと森で野宿してたんすっかね?

 疲れてるのか、まったく起きないっすよ」


「ここでしっかり休んでもらおう!」


二人が起きたら、世界情勢や地理を教えてほしかったのだ。

この世界での生活についてや、安全な場所と危険な場所など、

きっと役立つ情報を教えてくれるに違いない。


そして、シャワーの温かさで癒されたのか、

すぐに眠気が押し寄せてきた。

異世界に来てから色々体験しすぎたせいだろう。


「ちょっとベッドで横になるっす」

「今日は本当に色々あったよね

 後輩ちゃん、おやすみ」


私はふかふかのベッドに身を投げ出した。

すると、プルルがぴょんと飛び跳ねて、

パジャマにぴったりと張り付いた。


「プルルも一緒に寝るんっすか?

 私が寝てる間に

 食べたりしないっすよね?」


私は心配そうに尋ねた。

しかし、答えを聞く前に、

すでに眠りについてしまった。


プルルは後輩ちゃんのパジャマに張り付いたまま、

心地よさそうに丸まっていた。


「後輩ちゃんが寝ちゃったか。

 私もシャワー浴びて寝~よう」


シャワーを浴び終えると、静かに部屋の灯りを消し、

休むことにした。まだ夜の7時くらいだったが、

冒険の疲れが私たちを早い眠りに誘ったのだ。


数時間後。


リアは夜の闇に包まれた森の中を必死に駆け抜けていた。

木々の間をすり抜けるたびに、

背後から不気味な音が聞こえてくる。


その音は、骨がこすれる音、

枯れた木の枝が折れるような音、

そして時折聞こえる不気味な笑い声だった。


何度も振り返るたびに、

遠くに、無数の赤い目が暗闇の中で輝くのを見た。

夜の闇に紛れながら、静かに彼女を追っていたのだ。


やがて、視界にコテージが見えてきた。

リアは安堵の息をつきながらも、

追手が近づいていることを忘れずに、全力で駆け寄った。


「なんで、この森の中に家があるのよ?

 あれ?団長達が横になってんじゃん!

 寝てる場合じゃない、今すぐ起きろ」


リアは急いでテントの中に駆け込むと

彼らを思いっきり叩いたり、

往復ビンタして無理やり目覚めさせた。


「はっ!リア、生きてたのか!

 てっきり食われたのかと思ったよ」

「ヴァルガルムは結局どうなったんだ?」


「感動の再会だけど、

 今はそんな場合じゃないの!」


リアは必死に息を整えながら状況を説明しようとしたが、

レオとカインはまだ眠気が残っているのか、

目をこすりながらぼんやりとしていた。


「それオリハルコンの箱じゃないか?

 見つけてくれたのか!

 リア!良くやった」


「眠ってたから状況が分かんねぇな

 落ち着いて話せる場所に移動しようぜ

 なんか家があるし、入れてもらおうぜ」


「この箱を狙ってる奴らがいて

 追われてるのよ、

 早く逃げないとやばいわよ」


彼女の必死の説明もむなしく、状況は混乱を極めた。

どうやらリアは、モンスターをここまで

連れてきてしまったらしい。


「おい、大量の赤い目が

 俺たちの事を見てるぞ」

「まさかあれは!」


その正体は、武装した、

スケルトンの集団だった。


その赤い目は、彼らの魂の残り火か、

あるいは邪悪な魔法によって宿されたもののように、

不気味に闇の中で光り続けていた。

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