第18話

 ニチカが向かった先は、美術館。

 入り口はすでに施錠されており、入り口の横には、臨時休館という張り紙が貼り付けられている。

 オニキス・ペンシルの盗難事件によって、閉鎖されていることをニチカは理解した。

 人が全くいないことから、おそらく風紀委員会による捜査がひと段落したのだろう。

 ニチカは、事件が起きていた場所にたった一人いることを実感すると、なんだか不安な気持ちになってきていた。

「…………先輩たちを、元の生活に戻したい」

 だが、その不安を押し殺して、ニチカは動いた。

 ニチカは、こう考えていた。

 今はリュウセイに注目が集まっており、ニチカたち円卓クラブも、リュウセイの行方を追っているということになっている。

 真犯人は、リュウセイに注目が集まっている間に、何かをしようと考えているのでないか?

 もしかしたら脱出を計画してるかもしれない。

 ならば、リュウセイの事情をいち早く知ってしまった自分だけでも、隙をついて、犯人を追うのがいいと考えたのだ。

 そのために、ニチカはとある場所へ向かっていた。

 それは、美術館の入り口であった。

 美術館にて、ローブの人物とリュウセイが行動を共にしていたことは、監視カメラに映っていた。つまりどこかでローブの人物とリュウセイは合流したことになる。

 美術館に向かったリュウセイと、直前に会っていたのはニチカ。

 つまり、ニチカと別れた後に、何かがあったのだとニチカは考えたのだ。

「この周辺に、真犯人の手がかりがあるはず!」

 すると、ボーン、ボーンと鐘の音がなる。

 ニチカが顔を上げると、目の前の置き時計が、音を発していた。

 ゆらゆらと振り子が揺れていた。

 その先端に、目を向けた瞬間、ぐらりと立っていられないほどの強いめまいが、ニチカを襲った。

「!? なに、これ?」

 その気持ち悪さに耐える中、目の前に、いつのまにか紙が落ちていることに気づいた。

 紙にはこう書かれていた。

 

『お前は、ここで終わりだ』


「!!!」

 驚きの感情に、ニチカは囚われる。

 身体から力が抜けていく。めまいの中にいるせいで、どんどん力が入らなくなっていき、ついにはその場に倒れ込んでしまった。

 ニチカは気づいた。

 目の前に、黒いローブのようなものを被った人影が立っていることに。

 真犯人が、ニチカの目の前にいた。

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