第16話

「……今の電話を聞いた感じだと、あんた、リュウセイのことを特に知っているわけではないんだな?」

 ニチカを拘束する男が問いかけた。ニチカはそれに首を縦に振って答えた。

(そうだ……そもそも私、ピンチだった!)

 正体不明の男に捕まっている。それだけで、すでに大変な状況であった。

 すると、再びピロンとニチカのスマホに通知が入った。

 それはハートからのメッセージのようだった。

「さっきの電話のやつからか? 悪いが見させてもらうぞ」

 男がニチカの腕を掴んだまま、床に落ちているスマホを拾うと、部屋の机に置いた。

 そこにはハートからの、要点をまとめたメッセージが届いていた。

 男と一緒に、画面を確認する。


①美術館内にあるアトリエにて大掃除が行われた。その際に、美術館の金庫の鍵が壊れていることを美術部顧問の椎名先生が発見した。そして、中に保管されていたオニキス・ペンシルが無くなっていることが分かった。美術室の金庫は、学内のメインセキュリティではなく、独立したナンバーロックで鍵がかけられていたため、壊されていることに気づくのが遅れたと思われる。


(つまり、椎名先生が言っていたのは間違いだったってこと!? 先生が悪いわけじゃないけど、ぬか喜びだよ〜)

 ニチカはがっくりと残念な気分になった。

 メールはまだまだ続く。


②すぐに美術館内の防犯カメラの映像の確認が入ったが、そこには昨日の夕方ごろ、黒いローブで全身を隠した人物がアトリエに侵入し、オニキス・ペンシルを持ち出している様子がしっかりと映っていた。その人物は、円卓学園の男子生徒と一緒に行動を共にしていた。


③その、円卓学園の男子生徒は解析の結果、彩洲リュウセイであると分かった。


④その後、美術館を出て以降の行方は監視カメラに映っていないため分からない。彩洲リュウセイは家にも帰っている様子はない。


⑤彩洲先輩は、その黒いローブの人物と笑顔で話していることから、共犯者である疑いを持って、彼の行方を探している。


(彩洲先輩が関わっているなんて、そんなのおかしいよ! 何かの間違いじゃないの!?)

 学園内で事件が起きた。

 その事件に、ニチカの知っている人が関わっている可能性がある。

 ニチカにとっては、認めたくないショックな連絡であった。

「リュウセイ……」

 ふと、男がつぶやいた。

 ちらりと後ろを見ると、そこにいたのは、黒いフード付きのパーカーを着た、大人びた少年であった。

 フードの下には円卓学園の制服を着ており、ネクタイの色を見て、2年生の先輩だとニチカは気づいた。

 少し鋭い目つきの少年で、眉間に皺を寄せながら、ニチカを睨んでいた。

「クソ……どうする……このまま隠し通せるか……」

「あの、もしかして、彩洲先輩のことを知ってるんですか?」

 ニチカは、逆に質問をした。

「……俺は数留ノゾム。彩洲リュウセイとは、この学園に入る前からの付き合いだ」

 ニチカは相手が正体をすぐに明かしたことに驚いた。

「あんた、確かこの学園の構造とか変えられるんだろ? 今すぐ、このマンションのC棟の401号室へ、この部屋から道を繋げてくれないか」

 ニチカは、その言葉に従うかどうか迷った。

(見るに凶器も持ってないし、何かあったら逃げる隙はあるかも……)

 そう考えたニチカは、ひとまず従うことにした。

 それに、ニチカは、この男子生徒がリュウセイについて何かを知っているような気がして、少し様子を見てみたいと思ったのだ。

「……分かりました!」

 そして、ニチカはエクスカリバー・ブックに書き込んだ」

「エクスカリバー・ブック――――部屋を繋げて!」

 それによってリュウセイの部屋が別の部屋に繋がる。

 その先には――――!

「あっ! ノゾム! 出ていくなら一言くらい言ってよ! 寂しかったじゃん!」

「……ふぇ?」

 ニチカの目の前にいたのは、彩洲リュウセイであった。

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