夜散歩

家を少し出て、いつもと違う方向に散歩に出た。こうして僕は散歩に出て、退屈な脳みそを刺激しようとしているのだ。


どこに行こうが今の世の中、スマートフォンがあるので道に迷う心配がない。これが便利な訳なんだが少し、趣というものがないと感じる。

自分のお気に入りの曲をBluetoothで繋いだイヤホン越しに聴きながらそんなことを考える。

だが、こうして曲を流しているのに、こういうことを考えるのは矛盾している。

人間とは贅沢な生き物だなぁ。


少しして、僕は突然走る。

スマホと鍵がポッケから落ちないように持ちながら、昔、学校で教わったように。


吹く風が、より僕を包む。

電灯から当たる光によってできる僕の影が、僕より遅く動くくらいに速く。


はぁ、はぁ。と息を整えて歩きに移行する。


また、歩いて、歩いて、歩き続けた。


すると、墓地が見えてきた。


線香の匂いが仄かに漂う。

何人もの骨がこの地の下に埋まってると思うとなんだか不思議な気持ちになって面白い。


僕は死んだら、誰かが泣いてくれたりするのだろうか?

誰かが毎年、墓参りしにくるのか?


いや、死んだ後のことを考えてもしょうがない


風が吹き始め、寒さを覚え、引き返す。

墓地から一歩ずつ離れていく。


鼻にこびりついた線香の匂いがツンとして離れないまま。


今日も生きて帰っていく。

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