第4話 彼女の家で宅飲み①

「あ、お酒ないや。あはは」


「ちょっと何『じゃあ帰るか』みたいな顔してるの。近くのコンビニで買ってくるだけじゃん。ちょっと暑いけど、昼ほどじゃないしね」


「ささっと着替えちゃうね」


「このままでいい訳ないじゃん。君が来るから多少は気を使ってるけど、それでも君だからの恰好だし」


「この辺り同じ大学の子が結構ウロウロしてるんだよ。もちろん全然しらない子だけど、やっぱり恥ずかしいじゃん?」


「隣の部屋で着替えてるけど、絶対のぞかないでね!」


「いい? 変な振りじゃないからね? のぞいたら大変なことになるから。流石に昔のアニメみたいに殴ったりはしないけどね」


(近くに寄って来て耳打ち)


「絶対のぞいちゃだめだからね」


(部屋ドアのが閉まる音)


(部屋ドアが開く音)


「ね、やっぱりそこに居て」


「なんでって? なんて言って欲しいの?」


「少しドア空けておくから。音くらいなら聞いていいよ」


(服同士が擦れる音)


「一個だけ聞いていい?」


(服が落ちる音)


「付き合ってる子、本当にいないんだよね?」


「と、特に意味があるわけじゃないからっ!」


「今さ、夜じゃん? そういう話もしたくなっちゃう気がしない? 修学旅行的なノリでさ」


「しないって言わないで。ねえ、早く教えてー」


「ふーん。いないだ。へー」


(服が擦れる音)


「……私も一緒かな……」


(服が擦れる音)


「はい、お待たせしました。さっさと買ってきて宴会だー」


(足音。玄関ドアが開く音)


(車のエンジン音と踏切の警報)


(コンビニの入店音)


「ありがとう、あたしの好きなお酒覚えててくれたんだ。甘ければ甘いほど嬉しいからね。君もガンガン買っちゃえー。今日はあたしのおごりだから」


「気を使わない! 先輩を立てるのも後輩くんの仕事だぞっ」


「ビールいっぱい入れちゃうから」


「ハイボール多めがいい? わがままだなあ」


「コーラも買って割っちゃおう。氷も補充して~。フンフンフーン」


(適当な鼻歌)


「おつまみはまかせた。お菓子より惣菜多めでね。あたしはカップ麺をじっくり探します。やっぱり締めが大事だよね」


(ありがとうございました、という定員の声)


(部屋ドアが開く音)


(惣菜容器を開ける音)


(プシュ、という酒缶が開く音)


「今日は配信の練習に付き合ってくれてありがとね。じゃあ、かんぱい」


(酒缶同士がぶつかる音)


「はあ……おいしいぃ。からだ中がアルコールを歓迎しているよ。これはすぐ酔っちゃいそう」


「君のおつまみチョイスに間違いはないね。生ハムおいし」


「生ビールに生食パンに生ハムにさ、お刺身とかもだけどさ、なんでも生だよね」


「みんなナマが大好き」


「でも実際ナマじゃないよね」


「え、あたしはナマが好きかって? うーん」


「おいしければいいかな」


「早いね、飲むの。あはは、君の早く酔っちゃうんじゃない?」


(ゴクゴクという飲み込む音)


「次はどれ飲もうかな? ……うーん……なんか今日は酔いが回るのが早いような気がする。すっごい暑い。しっかり室温下げるのになあ。上着脱いじゃおう……」


(薄手の上着が落ちる音)



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