第3話 まちづくりシミュレーションの実況をしよう
「ホラーゲームの実況は難しいね」
(右隣から声がする)
「ちょっといい感じで実況できて、調子出てきたなんとて思ってたけどさあ。最後の方はずっと叫んでるだけになっちゃったもんね。あはは。怖すぎて君に変わってもらっちゃったしさ」
(軽くため息をつく)
「次どうしようか? せっかく君が色々アプリ見つけてくれたし、もう一つくらいゲームで実況してみない? あたしさ、この街を作っていくゲームに少し興味があるんだよね」
「全然別のゲームだけど、小学生の時の夏休みにやってたりしたから、意外とこの手のジャンル好きなんだよね」
「よーし決まり。さっそくやってみよー。ポチポチポチ―」
「あ゛だし゛がごの゛ま゛ぢの゛ぢょうぢょうでず!! あはは!」
「汚い声って言わないで。威厳のある声を出してみたの。この世界であたしは一番偉いから、舐められたらおしまいだからね。逆にあたしがペロペロしておげちゃうんだから」
「ペロ! ここは東京スカイツリー! ふっふっふっ」
「もうね、この街の町長が私になったからもう最高だよ。税金はゼロだし、犯罪も起きない。女性にも子供にも、ついでに男の子にも少し優しい街を目指すよ」
「ふふ、知ってるよ。チュートリアルなんていらないくらい。この何もない大自然にあたしだけの街を作ればいいんでしょ? 予算は一億円? ちょー金持ちで困っちゃうよ」
「街の名前はねー。もちろん『あめあさ街』」
(沈黙)
「君、何か言ってよ……。え、もっと工夫しろって……。ええ……わかんない。君の名前を付けようか? ……やっぱり駄目だよね」
「難しいよー。もう『猫好きあめあさ街』にする。異論は受け付けません。はい、君座ってください。はじめますよ?」
「じゃあまず発電所を作ってー、家建ててー、こんな感じかな」
「お、人口が一人になった。ウェルカーム。……一人でこんな出来たばかりの街に引っ越してくるなんて、きっと何か深い事情があるだろうね」
「独身……なのかな? わかった! このあたしが結婚してあげよう。金はあるんじゃ」
「お、また増えてきた。もう10人になってる。君はもう一人じゃないんだね。子供ができたのかな? 二人で頑張っちゃったね」
「何その君の反応は! これはゲームなんだから。1週間で子供10人なんで余裕なんだから」
「もう100人になってる! こんな家と発電所にしかない街に引っ越してきてくれるなんて、あめあさ町長は嬉しいよ。これも人徳かな」
「ご褒美に商業施設を建ててあげよう。立派なアウトレットモールに育つんだよ。これはコスココに育つといい。あと隣に工場も立てちゃう。これでみんな寝坊しても安心だね」
「なんて順調なんでしょう……。もしこれが本当の配信だとすると見どころなさ過ぎて怖くなるくらい」
「あれ? 住民達がクレームを言ってる。こんないい街にクレームなんてあるはずがないのに……。これは……きっとこいつらはモンスタークレーマーだね。モンクレどもめ家を破壊してあげようか」
「ふふ、でもあたしも悪魔じゃないのよ。言い分だけは聞いてあげる。さあ、王の前にその汚い面を見せなさい。このクズドモめ! はーはっはっは!」
「なになに……『ごみを捨てる場所がない』とな。……なるほどね。……ごめんね。臭かったね。今ごみ処理施設建ててあげる……」
「あー……あと飲み水が時々クサイのね。うん、分かってる。下水処理場がないからだね。ほんとごめんね。あめあさ街、クサくてごめんね」
(こちらに近づいてくる)
「ちなみにあたし自身はまーったくクサくないからね!」
「はあ。色々建てたらお金なくなってきちゃった。遊園地を建ててあげようと思ってたのに。でも住民達は幸せそう。幸福度が凄く高くなってきたね」
「あ、またクレームが出た。よかろう。聞いてあげるぞよ」
「はいはい、何? 『税金が高い』? カ゛エ゛レ゛!」
「今お金ないの知ってるでしょ? め! もう少し我慢しなさい。そのうち下げてあげるから」
(沈黙。キーボードの音が部屋に響く)
(小さな鼻歌が聞こえ始める。ゲームのBGM風)
「うーん疲れた! 順調で楽しいからつい話すの忘れちゃうね。配信で5時間とか続けて配信してる子もいると思うと尊敬しちゃうな」
「あー疲れた。今日の練習はここまでにしようか。もう10時過ぎちゃったね。付き合ってくれたありがとう。本当に君はいい後輩くんだ。少しお酒飲んで行く? 明日は講義もバイトもないんでしょ?」
「よしよし。決まり! やったね」
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