殿様

ある日、殿様が城下町に来るという知らせが広がった。

住民たちは父親たちを集めて話し合う。


「誰の娘が一番美しいか」


その家に盛り塩をする。

盛り塩は結界の意味もあるが、この時代では別の意味合いの方が強かった。

馬の好物である塩を家の前に盛ることで、疲れた馬はその塩を舐めるためにその家の前で立ち止まる。

その時に家の中にいる美人を見れば、殿様も足を止める。

そうして一家の繁栄を狙う手段でもあったのだ。


話し合いの結果決まった1つの家にのみ、盛り塩をすることにした。


翌日、殿様は城下町を歩いた。

住民たちの読みどおり、盛り塩をした家の娘は殿様に気に入られた。


だが、殿様が足を止めた家はもうひとつあった。


その家の前には立派な刀が置かれていた。

殿様に連れられてその家に立ち寄った馬は、中にいる雌馬をさぞかし気に入った。


そうして殿様は、1人の娘と2頭の馬を引き連れて城へと戻っていった。

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