終電で帰ったある夜。

お酒を飲みすぎたのか、具合の悪そうな女性がいた。

今にも吐き出しそうな彼女に、男は1枚の袋を渡した。

声も出せない状態なのか、女性はお辞儀をした。


その日、男は少し贅沢なプリンを買って帰った。


次の日、いつも通りコンビニでおにぎりを買い、レジ袋をもらった。

ふと昨日のことを思い出し、もう1枚余分にレジ袋をもらった。


その夜。

帰りの電車で袋が破れ、数個のグッズが中から溢れていた。

海外からの観光客だろうか。

溢れたグッズを腕に抱える2人に男は袋を2枚渡した。

「고마웠습니다」

なんと言っているかわからなかったが、感謝を述べていることは身振りで分かった。


その日、男はプリンを買って帰った。


数日後、男は父の誕生日を祝うために実家へと帰った。

母と一緒にお祝いのケーキを選んだ。

小さなケーキだが、メッセージをチョコレートで書いた特製のケーキだ。


店を出たとき。

2人の前を、両腕で教科書を抱えた小学生が通った。

男は躊躇なくケーキを袋から取り出し、教科書を袋に入れて渡した。


「教科書からケーキの匂いがしたら、ごめんね。」


笑顔でそう言う息子を、

母は、いやお袋は誇りに思った。

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