釣り

今日は大物を釣り上げた!


竿にかかる重さで確信した。

絶妙なタイミングでリールを巻き、だんだんと魚の姿が見えてくる。


細く時折キラっと光る体。


太刀魚だ。

これだけの大物だと今日の夕飯は豪華だな。

子持ちならもっと良いんだけどなぁ。

そう思いながら網で掬う。


太刀だった。

太刀魚ではなく、本物の刀だった。


長年海底に沈んでいたはずなのに、錆びるどころか最近まで手入れされていたかのように美しい。


しばらく手にとって眺めていると、鞘を持った人が海面から顔を出した。


「拙者の刀、返していただきたく。」


時代劇で見るような立派な髷を結い、着物を着ている男だった。

人の物を釣り上げて売り払うのは気分が悪い。

そう考えて素直にその男に刀を返した。


「ありがたき。そなたの行いにささやかではあるが、感謝を示さん。」


そう言って男は2枚の小判を投げ、海中へと戻って行った。


その夜のご飯は、限りなく豪華であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る