聞こえる

人は、死んだあとも耳が聞こえるという。

そんな話は信じていなかったが、実際に経験して本当だったと気づいた。

遅れてやってきた娘が泣きながら謝っている。

昨日の喧嘩の話らしい。

これまでの感謝の言葉もたくさんあった。

やはり自慢の娘だ。


その後、夜になって会社の部下たちがやってきた。

どうやらまだ耳は聞こえるらしい。

こんなにも慕ってくれている部下がいたとは思わなかった。

来世では部下にもっと優しくしよう。



お通夜では、遺産相続の話も聞こえてきた。

まだ耳は聞こえるらしい。

遺書には妻と娘に相続すると書いておいた。

決して多くはないが、娘の二十歳の誕生日に渡す予定だった銀行口座がある。

大学4年間分の学費くらいはあるだろう。

妻には内緒のへそくりだ。


あれから4年、体はなくても耳は聞こえるらしい。

今日は娘の20回目の誕生日だ。

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