第17話 爬虫類だから
「あ、そうだ、無裏君」
龍郎と二人で第四職員室へ行った帰り道、言ノ葉は彼への用事を思い出す。
無表情で自分を見下ろした龍郎を、以前の言ノ葉なら恐れただろうが、今は違う――というほどではないものの、
「あのね、私、美術部なんだけど、美術部のみんなが、この間の巨大ガエル騒動を見てたんだって。それで今度、ドラゴンの無裏君に、デッサンのモデルになってほしいって言ってたの。どうかな?」
すらすらと喋った言ノ葉だが、彼女は内心で葛藤していた。
ドラゴンは
龍郎にとってのドラゴンの存在がどういったものかは分からないが、もしも、人間の自分ではなくドラゴンばかりが注目されることを嫌がっていたら。
言語解読魔法で龍郎の伝えたいことを
「で?」
殺される⁉
聞いたこともない龍郎の低い声に、言ノ葉は、
「何も襲ってきてはいないが」
すっかりきょとんとしているらしい声に言ノ葉が顔を上げると、龍郎は、朝の少し
取り敢えず、怒ってはいないらしい――。
よかったー!
「あの、ごめんね! なんでもない!」
残像も見えないほどの勢いでぶんぶんと手を振る言ノ葉に、龍郎は「そうか」と言って、手に溜めていた魔力を引っ込める。
「よく
龍郎は再び言ノ葉を上から見下ろして、ドミノを並べるように淡々と喋る。
「
「そうなんだ。ごめんね」
本人が気にしているのなら、あからさまに
――というか、そっか。ドラゴンって爬虫類か。
それでも、人間の龍郎に爬虫類のような特徴が出るとは――。
確かに魔力は、その持ち主の脳を含めた身体に、ある程度の影響を与える場合があると、授業では教わった。しかし、もしも龍郎がドラゴンになれなかったとしても、その顔が思い切り泣いたり笑ったりするとは思えない。
「特に気にしてはいない」
あれこれと考える言ノ葉に龍郎はそれだけ言って、歩き続ける。――龍郎が、言ノ葉の腹まである長い脚をのんびり小股に動かしているので、言ノ葉は頑張って大股に歩いてみる。
――しかし、あの「で?」は何だったのだろうか。
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