41

二人は交差点を渡ると橋のたもとに着いた。橋の欄干にもたれ掛けて腕を組んでいた人物が二人を見つけ「おーい」と手を振った。


「待たせたか」とテオが返事をした人物は私服姿のツウだった。


「5分遅刻にゃ」


「5分だけ? ほぼピッタリじゃないか」


「にゃ。5分でも遅刻は遅刻にゃ。私の貴重な休暇をなんだと思っているにゃ」


「すまんすまん。また今度手伝うからさ」


「にゃー! お前さんここ数日でそれ3回目だぞ。一度でも借りを返してから言え」


「すまん、じゃあ今度食事に行こう、奢るよ」


「ふん、約束だぞ」


「ああ」


「で、そちらのご令嬢が……」


「ああ、例のコンダッシェ家の」


「リシリーです。先生、こちらの方は?」


「紹介するよ、憲兵隊所属のカッツォ中尉だ」


「あのウワサの!」驚いた表情でリシリーは言う。


「存じ上げて頂いてましたかにゃ。そう、私が朝刊は第一面の常連ことツウ・カッツォ、憲兵中尉にゃ」


「お会いできて光栄ですわ。中尉さん、もしかして先生の相棒さんって……?」


「そう、僕のあ「相棒!はにゃーテオも出世したもんにゃあね。リシリーさん、こいつは私の助手にゃ」


「助手さん……?」


「まあ」と急に疲れたような顔のテオのくちから言葉がこぼれた。「にゃ」と何かを言いかけたツウを制すと「とりあえず、ほら。行こう」と言い先頭を歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る