27
「やっぱり」
テオが応接室に入ると同時リシリーはそうつぶやく。
「どうしました?」
「9月8日の日記です」
「ええっと仕立て屋の娘さんと…… でしたっけ?」
「はい…… 弟は父が失踪後に誕生しているのですが」
「さっきの写真の?」
「はい。で、父はこの時の会話の内容を日記にしたためていました」
リシリーが9月8日に指さしながら日記をテオに見えるように向けた。
「”初産はなにかと大変だから妻にアドバイスをもらうと良い、そう伝えた……” あー、弟君と仕立て屋さん、ええっと」
「ブティック・黒さまですわ」
「ええ。ブティック・黒さんの長男くんは同じ生年月日で」
「二人とも父の失踪後に誕生しておりますの」
「となると、この9月はお父様が失踪した14年前の9月」
「はい、父の汚職疑惑があった15年前ではございませんわ」
「となると次のページに掛かれた9月はさらに次の年の9月?」
「先生もそのようにお考えになりますか……」
「ええ…… あ、この9月8日はやはり15年前の9月でブティック・黒さんのお嬢さんは1度流産を経験したという可能性は?」
「なるほど、その可能性が…… いえ、ありえませんわ」
「証拠でも?」
「はい、ブティック・黒のおかみさんがご結婚されたのがこの年の1月ですの、ご結婚のご挨拶に両親と伺った際に撮られた写真が黒さまの商店入り口に飾ってありますわ」
「なるほど、15年前の9月はまだ未婚だったと」
「はい、おそらくは」
「では、この9月は14年前の可能性が高い」
「ええ、1ページ目の忌々しい一件もやはり汚職事件の事で」
「お父様は5月14日の先王陛下のシャツの色を何かしらの方法で知った」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます