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「やっぱり」


テオが応接室に入ると同時リシリーはそうつぶやく。


「どうしました?」


「9月8日の日記です」


「ええっと仕立て屋の娘さんと…… でしたっけ?」


「はい…… 弟は父が失踪後に誕生しているのですが」


「さっきの写真の?」


「はい。で、父はこの時の会話の内容を日記にしたためていました」


リシリーが9月8日に指さしながら日記をテオに見えるように向けた。


「”初産はなにかと大変だから妻にアドバイスをもらうと良い、そう伝えた……” あー、弟君と仕立て屋さん、ええっと」


「ブティック・黒さまですわ」


「ええ。ブティック・黒さんの長男くんは同じ生年月日で」


「二人とも父の失踪後に誕生しておりますの」


「となると、この9月はお父様が失踪した14年前の9月」


「はい、父の汚職疑惑があった15年前ではございませんわ」


「となると次のページに掛かれた9月はさらに次の年の9月?」


「先生もそのようにお考えになりますか……」


「ええ…… あ、この9月8日はやはり15年前の9月でブティック・黒さんのお嬢さんは1度流産を経験したという可能性は?」


「なるほど、その可能性が…… いえ、ありえませんわ」


「証拠でも?」


「はい、ブティック・黒のおかみさんがご結婚されたのがこの年の1月ですの、ご結婚のご挨拶に両親と伺った際に撮られた写真が黒さまの商店入り口に飾ってありますわ」


「なるほど、15年前の9月はまだ未婚だったと」


「はい、おそらくは」


「では、この9月は14年前の可能性が高い」


「ええ、1ページ目の忌々しい一件もやはり汚職事件の事で」


「お父様は5月14日の先王陛下のシャツの色を何かしらの方法で知った」

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