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「となると14年前の9月30日の次のページの9月はさらに次の年の9月でしょうか」


「かもしれませんね。お父様が失踪なさったのは?」


「12月と記憶しています」


「となると14年前、9月30日を最後に日記を中断し、その年の12月に失踪。そして翌年、今から13年前の9月に再び日記を書き始めた」


「そう考えると……」


「自然ですね。ああ…… そうか……」テオは額に手を当てる。


「いかがいたしましたの?」


「いえ、この後半の9月の記述に不自然な点があったなと思い出しました」


「不自然ですか?」


「ええ、9月に雪が降ったと書いているでしょう?」


「ありました…… でしょうか」


「直接、降ったと書いてはいませんがね、ええっと後ろの9月の11日と15日ですね」


日記がテーブルの上で回転する、リシリーがノートを覗き込んだ。


「”11日、先日の天候不良で道がぬかるんでいる、足を滑らせ転んでしまい見失う、帰路の途中にまた降り始めた、2.3日は止みそうにない”」


「これだと暫く雨で11日だけ止んだと思うでしょうが」


テオの11日を指し示していた人差し指がツツと14日の箇所に降りてくる。


「14日、道が明るく月に感謝、足跡もしっかり」とリシリーが読み上げた。


「11日は見失う、14日には足跡ともとお書きですから、誰かを尾行していたと推測されます」


「尾行ですか」


「ええ、12月の失踪を挟んで1年弱、お父様の状況は定かではありませんが、元警察官という事には変わりありません。見失ったり、足跡を探したり、となれば尾行していたと考えるべきではないでしょうか」


「はい」


「また、月に感謝と書いていますから14日の尾行は夜です、雨に濡れた夜道を想像してみて下さい。ましてや11日にはぬかるんでいた様な舗装されていない道です、この日も昼間からぬかるんでいたと仮定すると」


「足跡もしっかりですか…… 父が尾行していた人物の足跡だけだった?」


「他の方の足跡が少なかったとも読み取れますがね。もちろん11日とは違う道だったり、別の人を尾行している可能性もありますが」


「父ならそれとなく書くはずです」


「そうだと思いました。そして道が明るいという一文、ぬかるむ様な道ですから街灯も少ないでしょう」


「月に感謝ですか?」


「ええ、お父様は月光を頼りに尾行した、その道は明るく、足跡もくっきり。となれば雪が積もっていた考える方がよいのかなと」


「先生、雪というのがピンときません。9月ですよ?」


「ええ、でもそう考えるのが自然なんですよ。おそらくこの年の9月14日は数日前から14日夕方まで雪が降っていた、それまでにその道を通った人の足跡は新しく積もった雪に埋もれ、お父様が尾行する人物の足跡の判別がつきやすかった。さらには道が明るいと、そうお書きですからね。見た事ありませんか? 雪の夜道」


「ありますわ、道が明るい…… 確かにその表現がしっくりはくるのは解りますが…… 9月に雪は積もりませんわ」


「ええ、9月に雪は積もりません」


「でしたら先生、仰ることが矛盾します」


「ええ、雪が降らない、それは王都での話」


「あ」


「ポロなら積もりこそしませんが、雪は降ります。では、国境を超えてもっと北なら?」


「なんと…… では、父は国外に?」


「失踪から半年以上たっていますからね、移動は可能かなと」

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