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「でも先生、先に食事にいたしましょう?」


と、リシリーが言ったのは玄関での事だった。


「食事を?」


「ええ、先生今日は王宮で食事をされる予定だったのではありませんか? そう思い家の者に用意をさせました」


「これはこれは、お気遣い痛み入ります」


「もちろん、王宮のお料理にはかないませんが、よろしければ」


「ありがとう、家に食材がなにかあったかな、と心配していたところなので助かりますよ。それに王宮の味付けはどうも僕は会わないので、楽しみです」


「そうなのですの?」


「ええ、友人曰く王宮の料理は子供もご老人も皆が食べられるよな味付けなのだそうで。もちろん不味いとかそういったことは無いのですよ、ですが、毎週のように食べたいかといいますと……」


「うふふ、そんなお顔をなさらなくても…… では私、着替えてまいりますので先にダイニングへいらしていただけます?」


「ええ、もちろん」


「では少々こちらでお待ちいください、案内を寄越しますわ」


一礼をしながら「私はこれで」と言ったリシリーが庭の散策中は玄関で待っていたメイドと2階へ消えていった。

テオはリシリーの言った案内に来る者は先ほどの執事風の男だろうか等と考えながら、玄関ホールに飾られる写真や肖像画をぼーっと眺めていた。

その矢先、コンダッシェ家の家族写真の中に一枚の写真をテオは見つけた。

その写真には3歳ほどと推測されるリシリーがベビーベッドを覗き込む姿をおさめた1枚で、その女の子が覗くベビーベッドには赤子が2人横たわっていた。


その写真に見入っていると「アイン様」と後ろから声を掛けられテオは身じろぐ。声の主は先ほどの執事風の男だった。


「お待たせをいたしました」と男は会釈をする、そして「ダイニングにご案内をいたします」と言い歩き始めた。

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