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「休憩がてら少し足を動かしたいのですが」


「はい。私でよければ屋敷を案内させて下さい、あまり広い家ではございませんが、うふふ」


「またまたご冗談を」ズイとテオが立ち上がる「僕の知る限り王宮の次に大きいですよ」


「そんな。王宮と比べられましても困りますわ」そう言いながらリシリーも立ち上がった。


「いやいや、本当です。あ、でもポロにあるカッツォ商会も大きかったなぁ」


リシリーを先頭に二人は退出し廊下を歩きはじめる。


「カッツォ商会といいますと、魔王討伐小隊の御用商人の?」


「ええ、この前、ポロに行く機会がありましてね」


「ああ、王立迷宮でおきた事件を解決なさったとかいう」


「ご存じでしたか」


「はい、姉より」ニコリとほほ笑むとリシリーが「あ、お庭でも?」と続けた。


「では」と言いテオがリシリーの後に続く「本当はポロの賢者様の生家を見てみたかったのですがね」


「あちらも素敵な所らしいとよくクラスメイトからは聞きますわ」


「ええ、僕もそう聞いてましたので、足を運びたかったのですが時間が無く」


「あら残念」うふふと口元に手を添えた。


「リシリーさんはポロには?」


「私あいにくと寒い所は苦手でして、暖かい所の方が好きですから」


リシリーが「あ」といい小走りになったそこは玄関ホールだった。


「これがキオに行った際の」と写真立てをひとつ掴むとテオに渡した。


そこには学校に通い始めたであろうくらいの背格好の女の子が映っていた、周りの木々がその写真が南国で取られたものであることを証明しているかのようにフレームに収まっている。


「この帽子の子がリシリーさん?」返事を待たずにテオは可愛いですねと続けた。


「かわいいだなんて。渡しておきながら少し恥ずかしいですね」


「ははは、これは失礼。ちなみにこの子は? リシリーさんのお隣の男の子」


「弟です。今はキオのコンダッシェ家に預けられていまして、向こうで暮らしています」


「離れて暮らしているんですね」


「ええ、父が養子としてこちらに来ましたでしょう? その後に今度は向こうが男の子に恵まれず」


「なるほど」


「ええ、将来的には向こうのコンダッシェ家に婿入りする予定なんです」


「貴族さまは大変ですね」


「当家は元が付きますけどね」


「これは、またまた失礼をしてしまった」


「いいんですよ、慣れっこです」


「でも、じきに叙爵の話もあるのではないですか? 復権派疑惑も過去の話ですし、お兄様は軍にお勤めなのでしょう? さらに言えばお姉様は王宮でとなれば国家への貢献も十分かと」


「はい、きっかけがあれば叙爵と、そういう噂も耳にはしますが…… ね、先生、お庭に行きませんか?」

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