19
「あの」とリシリーが口にしてから数刻の時が経ち、二人は柱時計の音が鎮まるのを待った。テオは顔を上げリシリーの口元がいつ開かれても良い様にと見つめていた。柱時計が5時を伝え終えた。応接室と同じ階の別の部屋ではカチャカチャと金属音が鳴っていた。
「ええっと…… 先生はそのご友人が、例えば反体制派の人間だと、そうお考えなのでしょうか?」
「どうでしょう。その可能性も否定はできませんが。うーんと、そうですね。細かい事にうるさい貴族さまならそうだと断定して糾弾するかもしれませんね、例えば名前を書かないのはやましい事があるからだーとか、もしくは潜伏中の元魔王軍の幹部なのではとか」
「ひ」と極めてちいさな悲鳴がリシリーの口から洩れる。
「あくまでも口うるさい貴族さまならそう言うかも知れないというだけですから」
「すみません、わかってはおりましたが、つい……」
「でもです。リシリーさん。つらい事を言うようですが、その可能性も捨てきれないという事は覚えておきましょう」
「……はい」
「あと、信じていただきたいのはですね」
「なんでしょう?」
「僕はもしリシリーさんのお父様が魔王復権派ですとか、他の反体制派だったとしても、いま目の前のリシリーさんはそうでは無いのだと。そう、思っています」
「……はい」
「では次のページにいきましょう、この日記の最大の謎ですから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます