17
「この日、8月24日の先王陛下については特別なことは無さそうですね、昼に隣国の大使と会食をしたくらいで。後は執務室と居室を往復して終わり。ちょうど追悼式の代読があった時間に居室にいらっしゃいますから王妃殿下と二人で聞いてらっしゃったのでしょうね」
「先生、どうでしょう。その日の夜、陛下はお忍びで…… とかは」
「お忍びで外出ですか? これもなさそうですね。何か思いつくことでも?」
「ええ…… ええっと、その日が24日だったかの記憶が定かでは無いのですが。父の帰りの遅い日がありました。その日はその年に取れた小麦を粉にしてパンを作った日だったのでなんとなくですが覚えています」
「なるほど。8月…… たしかに製パンの時期ですね」
「はい、春に収穫した小麦で作ったその年の初めてのパンですから」
「一口目は家長が口にするのが通例、ですからね」
「はい」
「でも、お父様のお帰りは遅かった」
「そなんです。もしその初麦のパンの日が24日であれば外で先王陛下と会っていたかもと思ったのですが」
テオは史料に目を落とし改めて記載を見る。
「やはり、お忍びで出られたような記載はないですね」
「そう、ですか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます