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「この日、8月24日の先王陛下については特別なことは無さそうですね、昼に隣国の大使と会食をしたくらいで。後は執務室と居室を往復して終わり。ちょうど追悼式の代読があった時間に居室にいらっしゃいますから王妃殿下と二人で聞いてらっしゃったのでしょうね」


「先生、どうでしょう。その日の夜、陛下はお忍びで…… とかは」


「お忍びで外出ですか? これもなさそうですね。何か思いつくことでも?」


「ええ…… ええっと、その日が24日だったかの記憶が定かでは無いのですが。父の帰りの遅い日がありました。その日はその年に取れた小麦を粉にしてパンを作った日だったのでなんとなくですが覚えています」


「なるほど。8月…… たしかに製パンの時期ですね」


「はい、春に収穫した小麦で作ったその年の初めてのパンですから」


「一口目は家長が口にするのが通例、ですからね」


「はい」


「でも、お父様のお帰りは遅かった」


「そなんです。もしその初麦のパンの日が24日であれば外で先王陛下と会っていたかもと思ったのですが」


テオは史料に目を落とし改めて記載を見る。


「やはり、お忍びで出られたような記載はないですね」


「そう、ですか……」

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