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「4月も短文の日記ばかりのようですね。この贈り物をしたというソーヤさんというのが」


「姉ですわ。兄も姉もその頃は寄宿学校や遠方の学校に行くため一人暮らしをしておりましたので」


「ふむ、それで贈り物ですか」


「ええ、世間では仕送りと呼ばれる類の物かと」


「なるほど仕送り、ですか」


言いつつテオはノートのページを捲った。


「そして問題の5月ですね。5月24日の日記にはこのように書かれています”国王陛下が珍しく紺色のシャツをお召だった、今日の素晴らしく晴れたわたった空の色に合わせたのだろうか、王妃殿下の計らいのようなものと感じられた。ひと月ぶりくらいだろうか。友を見つけた、いや図らずとも目に入った。季節外れのコートを着てフードまで深く被っていたからだ、こけた頬のわりに膨らんだ胴が目立つ、よもや着ぶくれとは言わせまいが……” の後は文字が掠れて読めませんね」


「となるとペンを変えたのは5月あたりでしょうか」


「あ」と声を漏らしたテオは最初のページと5月のページを行き来した、その上で続けた「そうかもしれませんね、この次の日記から少し太い字になっているのですが、最初のページの書き足しの文字と変わらない太さのようです」


「正解?」


「ええ、正解」


「うふふ、少し先生のお役に立てましたね」


「ええ。ありがとうリシリーさん」そう言いながらテオは自身の鞄に手を伸ばした。

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