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「ツウも知ってたか」


「にゃあ、もちろんにゃ。コンダッシェ準男爵、汚職まみれの警察官僚、貴族界の恥さらしとまで呼ばれた男にゃあね」


「でも、えん罪だったんだろ?」


「んー。えん罪とは言い切れないが正確かにゃ」


「そうなのか」


「正確には”他の汚職の罪も一人で被った男”にゃあね、準男爵自身も少額だが収賄の証拠が上がっている」


「そうだっけか?」


「にゃあ。後に糾弾された子爵を筆頭に男爵やら首都警察のお偉方の比ではないがにゃ」


「あぁ、そういうこと」


「当時の報道の熱量を思い出せばわかると思うがにゃ。連日、警察官僚の贈収賄だっただろ?」


「そうだったな、毎日々々朝刊の一面を飾っていた」


「にゃあ、幼年学校の食堂によく飾ってあったにゃ」


「そうだったそうだった、これ見よがしにな。あの頃は軍と警察は仲が悪かったんだっけ?」


「今も良いとは言えないがにゃ。まあ、当時の王都警察への捜査は憲兵が主導で行っていたからにゃあ、今以上に険悪だったとは、その当時を知る先輩方からはよく聞くにゃ」


「あの頃は幼年学校の制服で街を歩くだけで警察官に睨まれてたくらいだ、やっぱ険悪だったんだな」


「睨まれてた? そうだったか?」


「そうだったぞ? 気がついてなかったか?」


「そうだったか…… あまり記憶にないにゃあ」


「あー、あれだろ。女子は珍しいから制服も世間には認識されてなかっただろうからな、警察官もツウをどこぞの女学生だったとでも思ってたんだろ」


「なるほど、獣人だし余計にそれはありそうだにゃ…… あ、あぁあ」


「どうした?」


「いゃあ、男子と歩いていたら警察官に絡まれた事を思いだした」


「ははっ。そうだろう」


「にゃあ。どこぞの女子生徒か知らんが、幼年学校の生徒とつるむとろくな事が無いぞと、そう言われたにゃ」


「ツウも幼年学校の制服を着ていたのに?」


「そそ。あの時は何を言われてるのかよく解らんかったが…… そういう事だったか」


「そういう事だと思うよ。15年越しに謎がとけたか」


「にゃあ。15年は言い過ぎだにゃ、11年か12年くらいにゃね」


「ん?そうか? そうか、まだそれぐらいか」


「にゃあ、それぐらいにゃ。ま、話を戻すがにゃ。その頃の汚職の記事の隅っこに準男爵への報道を撤回するコメントがにゃ、小ぃーさく載っていてにゃ」


「そうだったか?」


「にゃあ。テオは覚えてないか?」


「あの頃は…… 今もだが、あまり新聞を隅まで読んだりはしないからなぁ、そんなコメントがあった事すら知らなかったよ」


「そうか、そうだにゃ。私は…… 父に限ってそんな事はしないと信じてはいたがにゃ。カッツォ商会もいつか叩かれないかと内心ヒヤヒヤもしてた、だからかなんだろうにゃ、それもあって新聞をくまなくチェックしてた」


「そうか、当時はどこかと戦争があった訳じゃなかったからな、クラスの誰も新聞なんて興味無かっただろう? にしては熱心に読む奴がいるもんだと、当時は思ってたよ」


「言われてみればだにゃあ。ま、テオはその記事を見ていないってなら仕方ないが、私は強く覚えていてにゃ。準男爵への批判をあれだけしておいて、訂正する時にはこれだけなのかと…… なにかこう、悲しというか憤りというか、複雑な感情を覚えたにゃ」


「そうだなあ。あの事件は準男爵が身代わりついでに警察を辞めて2年くらいだったか? 時間がそうさせた、と言うのも変な話か」


「にゃあ、準男爵の汚職疑惑から3年」


「てことは責任をとって辞めて2年だな」


「とる必要のなかった責任だがにゃ」


「ああ。そして準男爵が行方不明になって1年後だった」

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