第13話『俺の後輩は一緒に食べたい』

 イベントハウスを飛び出した俺と狼華は、一先ず腹ごしらえをするために近くのファミレスへとやって来た。

 ちょうど週末の昼時ということもあってか、店内は非常に賑わっていた。

 だが俺達は運良く待つ事もなくスムーズに席に座れた。


「やかましいなチクショウ…まぁ他に行くところもねぇし我慢するか…」

「先輩は何にします?」

「俺はそうだな…ハンバーグでいいや」

「なら私も同じので」


 机を挟んで向かい合って座る俺と狼華。

 2人分のセットメニューを注文し、料理が来るのを待つ。


「この後どうします?」

「帰るに決まってんだろ。もう用は済んだだろうしな」

「そういうと思ってました。今日の下着には自信あるんです」

「うん一言でツッコミのキャパ超えるのやめような?もうどっから突っ込めば良いのか俺わかんねぇよ」

「先輩が相手なら前でも後ろでもツッコミOKです」

「ファミレスでそういうことを言うんじゃねぇ!」

「あぅ」


 ふざけた事を言う狼華バカの額に机ごしの一撃。

 仮にも食事の場だぞ!常識くらいは守れ!


「痛いです先輩。痛すぎて何も考えられなくなりました」

「まるで普段は考えてるみたいな言い草だな」

「失礼な。ちゃんと考えてますよ」

「俺の事とか言うんだろどうせ…」

「おぉ、よく分かりましたね。さすがは私の先輩です」

「褒められてもうれしくねーっての」


 むしろこの流れで俺以外って言われたら正直ちょっと凹む。

 …いや別にコイツに好かれてることに安心感があるわけじゃねぇから…

 誰に言うでもない言い訳を胸の中に秘めておく。


「はぁ…ちょっと手洗いに行ってくる」

「お供します」

「来んな!ってか料理きたら先食ってて良いぞ」

「イヤです。先輩と一緒にイタダキマスするんです」

「…そーかよ、なら大人しく待ってろ」


 なぜか着いてこようとする狼華を止め、俺は1人トイレに篭った。

 数時間ぶりの1人の時間に、深く溜息を吐く。


「はぁぁぁ…なんか疲れたな…」


 狼華や衣緒と一緒にいると妙に疲れる。

 自分のペースを乱されているのだから当然と言えば当然なのだが、それにしても疲れる。

 もう少し振り回されないようにすれば良いのかもしれないが、それだとアイツらに負けたような気がする。何か良い方法はないものか…


「…戻るか」


 これ以上考えても仕方ない。

 俺は用を足すと狼華の待つ席に戻った。

 席に戻った俺を待っていたのは───


「お嬢ちゃん1人?良かったらオレと遊ばない?」


───いかにも軽薄そうな男にナンパされている狼華だった。

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